TCA冬のプレスツアー、わくわく度は低い?
Television Critics Association (TCA)プレスツアーに、お正月早々4日から16日まで参加しました。会場はパサデナの高級住宅街にあるランガム・ホテルです。クリスマス前から毎日のように届いたパイロットをしっかり観て臨みましたが、「これ!」と思う新番組がなく、わくわく度の低いプレスツアーでした。
敢えて選ぶとしたら、「今更、医療/刑事ドラマ?」とは思ったものの、DVDに入っていた数話を観るうちに、どんどんハマってしまったTNTの「Monday Mornings」とCBSの「Golden Boy」の2作でしょうか?
「Monday Mornings」はデビッド・E・ケリー初のケーブル作品、「Golden Boy」はグレッグ・バーランティが制作に携わっている点が鍵でしょう。但し、ケリーやバーランティのファンではない視聴者をパイロットだけでつなぎ止めることができるのか?切り口/語り口を替えただけで、視聴者が付いて来るのか?と不安になります。TNTはケーブル局なので、数シーズンは我慢の子でいてくれるかも知れませんが、視聴率の高い作品を多数抱えている地上波局CBSは辛抱も愛着もないことで有名です。これまで、何本の秀作を早々に葬ったことでしょう!視聴者の平均年齢が56.4歳のCBSは、相変わらず若者の視聴者を獲得できる作品を模索しています。但し、昨秋デビューした「Elementary」はテレビ視聴者の平均年齢が57歳に対して、オンライン視聴者は36歳という面白い統計も出ています。
【動画】「Monday Mornings」予告編
【動画】「Golden Boy」予告編
もう1作、私が気に入ったのは、SyFy局の「Continuum」です。SFモノは大いに苦手な私ですが、2077年から2012年にタイムトラベルする女刑事のドラマは見応えがあります。但し、カナダの作品なので、今回のプレスツアーでは取り上げられず、残念無念と言うしかありません。
【動画】「Continuum」予告編
キャストの知名度と作品の話題性で毎プレスツアー必ず満席になるのが、HBO新作発表枠です。今回はテレビ映画「Phil Spector」のアル・パチーノ、ヘレン・ミレン、ミニシリーズ「Behind the Candelabra」のマイケル・ダグラス、マット・デーモンの大物映画スターが登場しました。
無口で悪名高きアル・パチーノ(左)、ヒッチコック夫人役で好演した記憶がまだ新鮮なヘレン・ミレン
Daniel Locke, Andrew Evans / PR Photos
2009年以来、禁固刑に服している音楽プロデューサー、フィル・スペクターを演じるのがパチーノです。スペクターの弁護士リンダ・ケニー・ベイデン役がミレンですが、実はベット・ミドラーが降板した後、引き継いだ役だとか。パネルインタビューで隣に座っているケニー・ベイデン本人を見る限り、ミドラーの方が適役だったのに.....と残念に思いました。ミレンは品が良過ぎて、ドスが利かないのでは?が理由ですが、もっとも名優ですから、完成したものを観るまでは何とも言えません。
癌を克服して益々活躍のマイケル・ダグラス(左)、マット・デイモンは「衣装合わせにこれほど時間をかけたプロジェクトは初めて!」と告白
Janet Mayer, Izumi Hasegawa / PR Photos
私のお薦めはドキュメンタリー「Mea Maxima Culpa: Silence in the House of God」です。カトリック教会が何世紀も揉み消してきた、性的虐待を暴露した勇気ある聴覚障害者4人の体験談です。バチカンの庇護の基、聖職者という立場を利用して200人の性的倒錯犠牲者を出したマーフィー司祭に立ち向かう葛藤は、カトリック教会の内情を知らなくても共感できます。米国だけではなく、アイルランドやイタリアの訴訟にも触れており、今や世界中で司祭の性的倒錯が注目されています。米国だけでも、カトリック教徒は660〜780万人おり、組織化された宗教団体への風当たりがきつい今、このような作品を放送するHBOの勇気に驚きます。もっとも、プレミア局HBOは、誰も番組を視聴していなくても、受信料だけで成り立つわけで、スポンサーにおもねる必要がないからこそ、本作や「ゲーム・チェンジ」「Too Big to Fail」などが生まれるのでしょう。
【動画】「「Mea Maxima Culpa: Silence in the House of God」予告編