オーディオ・ジャンケットとは?
TCAプレスツアーに年2回参加して、新番組や継続番組の情報収集することが我々テレビ評論家の仕事の大半であると記しましたが、時々「オーディオ・ジャンケット」を利用することもあります。主に、LA外で撮影していて、スケジュールや広報予算の関係上、クリエイターやキャストをプレスツアーに集めるのが困難なケーブル局が開催する電話インタビューのことです。お誘いは開催の1週間ほど前に、メールで送られて来ます。参加したい場合は登録する必要がありますが、指定された時間にフリーダイアル番号に電話して、質問を投げかける仕組みです。会場へ出かける手間隙要らずで、パジャマ姿でコーヒーを飲みながらでもできる'お手軽'インタビューです。年間、最も開催回数が多いのはUSA局で、TNTとFXが年に数回、地上波ではNBCとFoxが過去数年に数回開催しました。
広報担当者が撮影の合間に控え室に来てもらった等、手の内を明かす場合もありますが、インタビューの対象がどこにいるのかは不明です。同時に、ジャンケット参加者が何人いるのかも不明ですが、質問する際に「次の質問は、○○紙/誌の○○さんからです」と紹介があるので、同じ人が何度も質問すると、参加者がいかに少ないか想像がつきます。
「TOUCH/タッチ」が始まったばかりの頃、キーファー・サザーランドのオーディオ・ジャンケットへのお誘いが入って、びっくりしたことがあります。参加者が多過ぎて、制限時間(平均45〜60分)内に収まるのだろうか?などと、要らぬ心配をしましたが、空けてびっくり玉手箱!質問するつもりは毛頭なく、サザーランドの対応を観察する絶好のチャンス!と達観していたのですが、3〜4人が代わる代わる「24」の映画についての質問で攻めるので、思わず「TOUCH/タッチ」について聞く人はいないの?と#ボタンに手が出ました。ABCディズニー作品番宣用の個別インタビューをさせていただくようになって学んだ鉄則です。「TOUCH/タッチ」という作品のインタビューですから、例え同局の作品とは言え、「24」の質問で時間を無駄にすることは御法度なのです。さすがに、広報が時間の無駄と判断したのか、15分ほどで呆気なく終了してしまいました。
キーファー・サザーランドAlbert L. Ortega / PR Photos
USA作品は、大多数がLA外で撮影されており、数年前からプレスツアー時は、朝食/昼食をしながら、各作品のキャストがローテーションを組んで、評論家が待ち受けているテーブルを回って、カジュアルな会話を楽しむ方式を採用しています。但し、この方式はキャストに重きが置かれているため、クリエイターの話を聞けないという難点があります。
その盲点を知ってか知らずか、今年は「ホワイトカラー」のジェフ・イースティン、「SUITSスーツ」のアーロン・コーシュ、「リガールに恋して」シーズン2で制作を引き継いだピーター・オッコにインタビューすることができました。「SUITSスーツ」のコーシュは、今回が初めてだったので、制作の動機から、マイクの人柄、ドナの人気など、普段疑問に思っていたことを尋ねる絶好のチャンスでした。やはり、クリエイターとの会話は刺激的です。世の中には、賢い人がいるもんだ!と、畏敬の念で一杯になります。
今年インタビューできた俳優は「SUITSスーツ」のドナ役サラ・ラファティー、「Political Animal」のダグラス役ジェームス・ウォルク、「ホワイトカラー」のモジー役ウィリー・ガーソンでした。他にもUSA局の「サイク/名探偵はサイキック」「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」「救命医ハンク セレブ診療ファイル」「ザ・プロテクター/狙われる証人たち」「コバート・アフェア」「Necessary Roughness」のお誘いが来ましたが、スケジュールが合わなかったり、特に聞きたいこともない作品や俳優のジャンケットには参加しませんでした。
サラ・ラファティーWinston Burris / PR Photos
「Glee」が始まった年に、主要キャスト数人を世界各国のジャーナリストが国際電話でインタビューする異例のオーディオ・ジャンケットがありました。この時ばかりは、人の質問とキャストの答えを聞いて重複しないようにぴりぴりし、すぐに回って来る自分の番には、面白い質問をしなければ!と気を遣って、くたくたになりました。通常、インタビュー記録を局がデジタル配信してくれるのですが、「Glee」の記録は一切もらえず、苦労と努力が水の泡になってしまいました。後日、使おうにも、答えはうろ覚えです。英語が母国語ではないジャーナリストの意味不明の質問に、訳の解らない答え(質問が理解できないのでは、答えようがないのは当然ですが)のやりとり、答えを書き取っていると、質問を考えることができない!このような、大混乱のオーディオ・ジャンケットに参加したこともあります。
来年も、クリエイターの話を聞く機会を設けて欲しいものです。この2週間、1月のプレスツアー用に2013年春の新番組のパイロットが続々と到着していますが、どれも似たり寄ったり!毛色の違う作品を創作するのは、年々至難の業になっているのでしょう。それにしても、「Last Resort」はもう少し長い目で見て欲しかった....心残りです。