夢落ち?死に落ち?「マッドメン」完結間近
※この記事には「MAD MEN マッドメン」のネタバレが含まれます
2013年、シーズン7を以って「MAD MEN マッドメン」シリーズを完結すると発表がありました。2014年、4月13日からフィナーレ・シーズン前半7話が放送され、約1年後の去る4月5日、後半「The End of an Era」(=時代の終わり)が始まり、いよいよ佳境に入りました。「ブレイキング・バッド」の最終シーズン14話を2年に振り分けて、高視聴率を獲得したAMC局の二番煎じですが、私はエミー賞獲得のチャンスを二倍にする策略と読んでいます。あれだけ賞と言う賞を総なめにしてきた作品ですが、キャストが誰一人としてエミー賞を獲得していないので、「最後のチャンス!お願い、お願い!」の哀願が込められているように思います。
プレスツアー時に配られた、シリーズ最後の番宣品。フィナーレシーズンの副題「The End of an Era」が入ったコーヒーカップには、コーヒーとウィスキーのミニチュア瓶が入っていた。 (c) Meg Mimura
AMC局は、1月10日プレスツアーに、クリエイターのマシュー・ワイナー以下、オリジナル・キャスト6人(ジョン・ハム、ジョン・スラッテリー、ヴィンセント・カーシーザー、エリザベス・モス、ジャニュアリー・ジョーンズ、クリスティーナ・ヘンドリックス)を集めて、最後のパネルインタビューを開催しました。当然のことながら、どのような結末を迎えるかは、一切明かされず、しかも撮影は半年前に完了していて、キャストが顔を合わせるのは久し振りと言うこともあって、ハムが「キャストは仲が良い、良い!」と繰り返す割には、何ともぎこちないパネルインタビューでした。
ピート役のヴィンセント・カーシーザー。最初で最後の個別インタビューで、ピートはドンに悪者にされた犠牲者で、根は善良なキャラと私の解釈を述べたところ、「ピートの真の姿を読み取ってくれた視聴者は稀!」と大喜びだった。最終的には、長い物には巻かれろ!で、妻と別居し、愛人を囲うあの時代の典型的な男になってしまった。 WENN.com
3月末、ジョン・ハムは、アルコール依存治療施設に入院していたことを明かした。元々、ドンと同様の暗い過去を背負っているハムをワイナーが’見初め’て抜擢したことを考えると、長年「救いようのない卑劣な女たらし」を演じた故に、飲酒に走ったという言い訳はとってつけたようだ。広報の手では? WENN.com
次作についても、「スピンオフなど、考えたこともない」と言うワイナーに対して、ハムは「失業したから、カーディテイリングのアルバイトを始めたんだ。洗車から内装まで、とにかくピカピカにするよ。この後、ホテルに駐車している人でも引き受けるので、よろしく!」と、はぐらかします。これに応えて、寡黙なカーシーザーが「一緒に始める筈だったのに、独りで向かいに店を構えるんだもんな~。参ったよ」と茶々を入れます。
シーズン2までは、幸せを手に入れようと暗中模索する1960年代の広告マンを描く秀作!と絶賛し、声を大にして推薦していた私です。ところが、シーズン3に入って「マッドメン」の世界では、どのキャラも人間として成長しないこと、善良なキャラを次々と弾き飛ばす卑劣人間集団でしかないことに、嫌気が差し始めました。以降、酒と女遊びの合間に業界の「プリンス」振りを発揮していたドン(ハム)が、商才など欠片もないのに、広告代理店の吸収合併戦に巻き込まれ、自暴自棄になって行く過程が5シーズンも続いてきました。
嘘で固めた、見掛け倒しの生活は止まる所を知らず、タイトルバックのオープニング動画が示すように、ドン・ドレイパーは奈落の底へきりもみ降下して行きます。5月のフィナーレ回では、奈落の底を垣間見ることになるのでしょうか?
【動画】「マッドメン」タイトルバックのオープニング動画
「LOST」の死に落ちに憤慨する声は未だに健在で、笑い種にするマスコミは後を絶ちません。番組のジャンル上、「LOST」ほど謎解きをする必要も負担もない点を指摘した上で、ワイナーは「どんな終わり方をしても、視聴者全員に喜ばれることは先ずない。怒らせようとか、がっかりさせようとか、そんな悪意はない。唯、単にこれまで観たことのないドラマにしたいだけ!」と述べました。一方、パイロットとフィナーレ回を演出したスコット・ホーンバッカー監督/プロデューサーは、「物議を醸し出すことは間違いないが、ドンの生き様に相応しい締めくくり。満足感はある筈」と、意味深の発言をしています。
ハム(左)と、クリエイターのマシュー・ワイナー。自分のビジョンを最後まで貫き通した数少ない放送作家として、テレビ史に大きな足跡を残した。本作のDVDに録音されたワイナーのコメントは、正にドン・ドレイパーへのラブレターである。 WENN.com
昨年12月30日に掲載した記事「有終の美を飾った『ホワイトカラー』」にも書きましたが、シリーズの終わり方ほど難しいものはありません。4月5日に放送された第8話「Severance」は、夢なのか現実なのか不明のシーンが多々あり、夢落ちをほのめかしました。様々な憶測が飛び交っていますが、私が観たい結末は?いずれも、タイトルバックのオープニング動画からヒントを得ていますので、ドン・ドレイパーがきりもみ降下して行くところを想像してください。
第一案
無惨に見捨てたキャラの報復です。慕っていた異母兄ドンから手切れ金を渡されて、失意のあまり自殺したアダム・ホイットマン(ジェイ・ポールソン)か、首吊り自殺したレーン・プライス(ジャレッド・ハリス)財務責任者の「霊」に苛まれて、ドンが高層ビルから飛び降り自殺する最期。
シーズン5で、ドンに助けを求めたが、冷酷に切られたレーン・プライス(ジャレッド・ハリス)は、自ら命を絶つ。エミー賞助演男優賞を獲得できなかったのが、残念でならない。 WENN.com
第二案
女性視聴者に最も受けると思われるエンディングです。ドンの唯一の彼女(愛人や不倫相手ではなく)フェイ・ミラー博士(カーラ・ブオノ)の仕返しです。シーズン4で、公私共ドンが散々利用した挙げ句の果てに、若い秘書メーガン(ジェシカ・パレ)に乗り換えた、才色兼備のコンサルタントを覚えていらっしゃいますか?フェイの場合、父親のコネ(?)を利用して、自ら手を下すことなく、ドンを’消す’ことが可能です。
フェイ・ミラー博士(カーラ・ブオノ)は、誘惑されて捨てられた才色兼備の心理学博士。60年代には珍しい独立独歩の女性だが、父親が暗黒街のボスであることを、ドンは忘れたのか?フェイの間違いは、ドンの秘密を聞いてしまったことだ。 WENN.com
いずれも、「ドンの生き様に相応しい締めくくり」だと思いませんか?