トム・マイソンに追いつけ、追い越せ!新星ジョー・ドイル
2015年も、トム・マイソン(「スリーピーホロウ」)に追いつけ、追い越せ!とばかりに、英国やアイルランドからニューフェースが続々と登場しています。1月のプレスツアーで紹介された作品に出演している数人の中から、今回は英国出身のジョー・ドイルをご紹介します。
1月7日、プレスツアーの初日に、ナショジオ局の特別番組「イエス・キリスト 磔刑の真相」(原題:「Killing Jesus」)の制作発表パネルインタビューに登場したジョー・ドイルが、総勢9人のキャストの中で、寡黙ながら最も輝いていました。この作品は、去る3月29日、復活祭に先駆けて、世界で放送されたと聞いていますが、ローマ皇帝ティベリウスやユダヤ属州のポンティウス・ピラトウス総督の地位を脅かす政治犯として処刑された史的イエスを描いたテレビ映画です。
私が会ったのは、星の王子様が大人になったような雰囲気の好青年だけに、ドイルが好んで演じる邪悪な暗〜いキャラに仰天。キャラ毎に変身する、将来が楽しみな役者だ。 Frederick M. Brown/Getty Images
ミッションスクールに通った私は、幼い頃からキリストの生涯を描いた映画をこれでもか!これでもか!と見せられ、その度に感想文を書かされました。いくら配役を代え、切り口を代えても、内容にそれ程大きな差がある訳ではなく、感想文の題材に困って「キリストを演じた役者の青い目が綺麗だった」と書いたら、その部分に朱筆で二重線が引かれていました。カトリック信者でもないのに、何をどう感じろと言うのだろう?と、子供心に納得の行かないもやもやを感じたことを今でも覚えています。以来、子供の素直な感想を押し殺すカトリック教育に反発し、大人になってからはこの手の映画は敬遠してきました。
パネルインタビュー後のパーティーの席で、ユダの裏切り行為はうろ覚えの私は、ドイルを質問攻めにしました。もっとも聞きたかったのは、裏切り者イスカリオテのユダを演じることに、抵抗はなかったのか?と言うことでした。「リサーチして、僕なりにユダという人間を解釈し、信仰心からナザレのイエスについて歩いている他の使徒とは違う、当時の社会事情や環境を読み取れる生身の人間として演じました」と、ドイルは説明。繊細で思慮深い印象だったドイルが、如何にユダを演じるのか、是非この目で確認しよう!と決めました。
裏切り者の代名詞とまでなったユダを演じたドイル。長年、この手の映画を敬遠していたからか、作品の切り口が新しいからか、新たな発見があり、ドイルの好演も印象的だった。 National Geographic Channels/Kent Eanes
「9歳で、父(アイルランド人俳優トニー・ドイル)の芝居を見て、変身ぶりに感動しました」と言うドイルの発言から、豹変振りの説明がつくと言うものです。とは言え、両親は放任主義だったらしく、「親は役者の辛さを知っているので、反対する訳でもなく、勧める訳でもなく….好きなように生きなさいと言われました」と語ります。
10歳でフランスに引っ越し、幼くして異文化体験をしたため、ロンドンに戻った時には、英国の学校教育に違和感を感じたそうです。17歳で父親を亡くし、高校を中途退学したドイルは、特に何かになろう!と決めていた訳ではなく、バイトしながら、音楽活動に力を入れました。ある日、演技の基礎がなくても良い端役を演じたことがきっかけとなり、25歳でエージェントに恵まれ、2007年初の英国テレビシリーズに出演し、芸能活動の第一歩を踏み出しました。
2014年、NYに拠点を移した直後、エージェントに勧められてユダ役に応募。テープを送って数日後には、皮肉なことにロンドンに呼び戻されてオーディションを受け、1週間後に登板が決まりました。「イエス・キリスト 磔刑の真相」は、モロッコで2ヶ月余りかけてロケ撮影し、現在はルイジアナ州シュリーブポートで、WGN局の「Salem」シーズン2に全力投球しています。
「Salem」シーズン2から登場する魔術師セバスチャン・マルバーグ男爵を演じるドイル。1日16時間ほど、暗〜い、怖〜い’マイナス汁’に漬かっているので、撮影が終わったらハワイにでも行って、心身とも清めてきて!とお願いしてしまった。
俳優しかない!と確信して生きてきた訳ではないので、「高校中退したのはまずかったかな?って時々思います」とドイルは告白します。ユダ役を見事にこなし、「Salem」ではドイツから新大陸に乗り込んで来た、魔術師セバスチャン・マルバーグ男爵を演じています。シーズン2に初登場のキャラなので、まだ映像を観たことはありませんが、「今回も悪役なので、今後ずーっと悪役しか回って来ないかも?」とドイルは笑います。
テレビや映画を観て育ったと言うので、特にお気に入りがありますか?と尋ねると、何と「シャイニング」や「バットマン」など、次々と挙がるホラー映画や暗〜い映画の数々。その上、最近観たテレビ番組の中で「ハウス・オブ・カード 野望の階段」が好きだとか….本当に、暗いのが好きなんですね?
幼い頃に目撃した父親の’変身’の醍醐味を満喫しているように見受けました。私の好きなジャンルではないので、次は両目を開けて楽しめるコメディーに出演して欲しいものです。