今度は「HOUSE」クリエイターの新作「Battle Creek」
2月16日に、プレツアーの第一回目として、既に放送が始まったハート・ハンソン(「ボーンズ」)の「Backstrom」をご紹介しましたが、今日は「HOUSE」を世に送り出したデビッド・ショアの新作「Battle Creek」をご紹介します。ハンソンとショアは、Foxで午後8時~10時枠を占拠したことがあり、2人共カナダ出身であることから、「Foxのカナダ曜日」と呼ばれたほどの、人気クリエイターです。
【動画】ドラマ「Battle Creek」トレーラー
ハンソンの「Backstrom」は、CBSが買ったにも関わらず、昨秋の新番組のラインアップに挙がらず、結局Foxが放送することになりました。奇しくも、ショアの新作「Battle Creek」は、3月1日よりCBSで開始されました。もしかしたら、犯罪局CBSが「Backstrom」と「Battle Creek」を天秤に掛け、「Backstrom」が押し出されたのでは?と勘繰ってしまうほど、類似した犯罪捜査ドラメディーなのです。
「Battle Creek」は12年ほど前に、「ブレイキング・バッド」クリエイターのヴィンス・ギリガンが性格、価値観、仕事ぶりなど、何もかも両極の2人を犯罪捜査の相棒にしたらどうなるか?と考えて、創作したドラメディーです。かれこれ、10年ほど前からCBSがシリーズにしたいと持ちかけていましたが、「ブレイキング・バッド」が完了して、ギリガンに心の余裕ができ、やっと実現した作品です。
ギリガンは、既にAMC局で「ブレイキング・バッド」のスピンオフ「Better Call Saul」に没頭しており、手直しや制作はショアに一任することになって、一件落着しました。「ブレイキング・バッド」と「HOUSE」は作柄もジャンルも全く違いますが、昨夏のプレツアーのパネルインタビューで、「感性がよく似てるんだ!」と声を揃え、ギリガンがショアなら任せても安心とバトンタッチしたことが明らかでした。
ミシガン州バトル・クリークは、人口5万のいわゆる中西部の町です。自動車の首都だったデトロイトが衰退し、その煽りを受けて犯罪は増加の一途をたどっていますが、市警察の予算は減る一方です。市警察のラス・アグニュー刑事(ディーン・ウィンタース)は、長年のデカ生活から、何もかも疑ってかかる性悪説派人間になってしまいました。仕事をしようにも、捜査に必要な人手も器具も、自ら捻出しなければならず、苦労の割には報われない叩き上げデカです。
ウィンタースは、「30 ROCK/サーティー・ロック」のダメ男デニス役が印象に残っているが、演技の幅は極めて広い。ラス役で登板するにあたって、「LAに越して来ることが、最大の挑戦だった」と述べたほどの生粋のNYっ子である。 WENN.com
そこへ鳴り物入りで登場するのが、モナコ育ちのミルトン・チェンバレンFBI捜査官(ジョシュ・デュアメル)です。貧相な警察署内に、ガラス張りのハイテクFBI駐在事務所を施工し、オーダーメイドの背広や靴を身にまとい、性善説を信じて止まない、貴公子のようなミルトが、まるで掃き溜めに鶴のように舞い降りたから堪りません。ミルトの英国紳士風の身なりや素振り、ハイテクを駆使する捜査班に目がくらみ、上司も部下もラスの言うことなど、どこ吹く風!と無視。
デュアメルは、「ラスベガス」のダニー役がまだ記憶に新しいほど、テレビ復帰は久々だ。モデルから俳優に転身しただけあって、いつもカッコ良い役が回って来るが、今回のミルト役を演じるにあたって、バトル・クリークに出向き、「地元警察とFBIの力関係を身を以て体験したことが功を奏した」と述べた。 WENN.com
ミルトのたっての所望で、コンビを組んで地元の事件を捜査する羽目になったラスですが、二人はいつまでも「陰」と「陽」の平行線を辿るのでしょうか?それとも、意外にもお互いを必要とする「二個一」だと認め合うようになるでしょうか?相棒になる経緯や展開が大いに楽しみです。4話あたりまでは、ミルトがFBIデトロイト支局から何故左遷されたか?を聞き出そうと必死になるラスの姿と、のらりくらりと交わすミルトが面白おかしく描かれています。
「中西部には根っからの善人がいっぱいいるから、『HOUSE』とは正反対の希望に満ちたドラマにした」とショアが語っています。「Backstrom」に引き続き、コメディーを盛り込んだ、軽いノリの「Battle Creek」は、雨上がりの虹のような作品と言えます。