「デキる女」早くも再来か?今秋登場する4キャラをご紹介
スパイ、吸血鬼や魔女の氾濫で、現実的な「デキる女」が画面から姿を消した昨今の風潮を、昨年9月2日の「デキる女はどこへ行ってしまったの?」に綴りましたが、早くも次の周期の到来でしょうか?今秋、2014年版「デキる女」4キャラがデビューします。
CBS「Madam Secretary」は、大統領のたっての願いで、国務長官の座についたエリザベス・マッコード(ティア・レオーニ)の公私を描くドラマです。政治家には真似のできない型破りな発想と、CIAアナリスト時代のコネ、直談判できる大統領との間柄をフルに活用して、世界を変えて見せるぞ!とワシントンに乗り込んだエリザベスですが、初っぱなから反感を買って四面楚歌になります。
「Madam Secretary」エリザベス・マッコード役レオーニ。12歳の息子に学校の送り迎えができなくなると説明したら、「最近、うざいと思ってたから、良いよ!」と言われて、女優業復帰を決めたと笑う。 WENN.com
「クローザー」のシーズン1を彷彿させますが、南部出身の淑女ブレンダ・ジョンソンはスカートひらり、「たかが女」を逆手に取って出世、夫フリッツ(ジョン・テニー)は二の次の「デキる女」でした。エリザベスは、パンツスーツを常用する男勝りの国務長官ですが、夫ヘンリー(ティム・デイリー)と十代の娘と息子を大切にする、公私のバランスのとれた「デキる女」を目指すそうです。
パイロットを観た限り、内容や設定は、ヒラリー・クリントンが初の女性大統領になるための根回しドラマ?と勘ぐられた「マダム・プレジデント〜星条旗をまとった女神」(05〜06年)に酷似しています。大統領から国務長官に格下げとなったものの、本作こそ、ヒラリーが次期大統領になるための布石でしょうか?
【動画】「Madam Secretary」トレーラー
7月17日の制作発表会の席で、クリエイターのローリー・マクリアリーが、「ヒラリー・クリントンがベンガジ事件の公聴会で証言しているのを見て、これだ!と閃いた」と述べたように、第67代国務長官を務めたヒラリーがモデル。「男尊女卑がまかり通っている国に、女高官が乗り込んで行くって、どんな感じなんだろう?と想像し、CBSに持ち込んだところ、ベテラン放送作家バーバラ・ホールを紹介され、パイロットに至った」と経緯を説明しました。
ホールは同局で「Joan of Arcadia」(03〜04年)を創作した放送作家で、久々のテレビ復帰です。家族ドラマが得意なホールは、「結婚や家族を顧みない、離婚間際のデキる女はもう旧い」と指摘し、完璧ではないものの、家庭円満を目指すマッコード夫妻を描く抱負を述べました。ヒラリーの生き様は、女癖の悪い夫ビルなくしては考えられませんし、離婚率5割以上の米国で、結婚も家庭も仕事も満遍なく、そつなく「デキる女」を敢えて描くとは....例え、架空の世界でも、嘘っぽくならないでしょうか?
ホールが最早「旧い」とレッテルを貼った、公私のバランスがとれない現実的な「デキる女」一人目は、大統領のブリーファーです。前回、「私は気難しくなんてないわ!」発言の舞台裏を明かしましたが、キャサリン・ハイグルがテレビ復帰を賭ける「State of Affairs」(NBC)の主人公チャーリーです。婚約者を亡くした後のPTSDで私生活は荒れ放題ですが、CIAアナリスト/大統領のブリーファー職に没頭しています。毎朝、チャーリーが助言する女大統領との嫁姑関係が、このスリラー/ミステリーの原動力です。
「State of Affairs」の主人公チャーリーを演じるハイグル。才色兼備で、外見は完璧だが、婚約者アーロンの仇討ちを胸に秘めている点が、「リベンジ」のエミリーと同じだ。 WENN.com
【動画】「State of Affairs」トレーラー
NBCから9月にデビューする「The Mysteries of Laura」のNYPD殺人課刑事ローラ・ダイアモンド(デブラ・メッシング)が、二人目の「デキる女」キャラ。バツイチ、シングルマザー振りを、ユーモアたっぷりに描く犯罪捜査ドラメディーです。やっと離婚にこぎ着けたと思ったら、元亭主ジェイク・ブロデリック(ジョシュ・ルーカス)が上司として転任してきたこともあって、久々の独身生活は筒抜け。おまけに、やんちゃ盛りの双子の子育て方針を巡って、どこまでも平行線のローラとジェイクなど、公私混同の複雑な設定です。しかし、中味は古典的犯罪捜査モノになっていて、充分に楽しめます。メッシングだから観たい!と思わせますが、バツイチ/シングルマザーの刑事なんて、それこそ旧くないですか?
「The Mysteries of Laura」ローラ・ダイアモンド刑事役メッシング。「家庭も職場も完璧に!がモットーなんだけど....」とローラの建前を指摘するが、仕事は子育てから逃避するための言い訳?的シーンが多々あって、大いに笑える。 WENN.com
【動画】「The Mysteries of Laura」トレーラー
「ウィル&グレイス」で昔取った杵柄を十二分に発揮するメッシングですが、殺人課刑事という職業柄、「退かない、詫びない、媚びない」が三拍子揃った、等身大の女として描かれています。職場の男勝り振りを、そのまま結婚/家庭に持ち込むとこうなると言う、現代女性への警告なのかもしれません。
最後にご紹介するのは、ヴィオラ・デイヴィスの初の主演シリーズと言う理由から、今秋一番期待が寄せられている「How to Get Away with Murder」です。しかも、「グレイズ・アナトミー」「プライベート・プラクティス」「スキャンダル」に引き続いて、ABCのヒットメーカー=ションダ・ライムズが放つリーガル・サスペンス・ドラマです。
但し、著名なプロデューサーのお墨付きよりは、もう少し内容が濃く、クリエイターのピーター・ノウォークは、ライムズ将軍のお膝下で育った(=ションダランド制作会社で長年働いている)ライターです。「極めて平凡な人生を送ってきたので、凡人を突飛な状況に置くとどうなるか?を想像するのが大好き。法学部新入生が殺人事件に巻き込まれたら、どうなるか?を企画した」と、ノウォークは7月15日のパネルインタビューで述べました。
「How to Get Away with Murder」の看板女優デイヴィスは、「ダメージ」のパティー・ヒューズと同様の冷血漢として描かれている。キーティング教授の謎を紐解いて行くのが楽しみなシリーズだ。 WENN.com
デイヴィスが演じるアナリース・キーティングは、フィラデルフィアのカリスマ弁護士ですが、刑法の基礎講座「殺人罪を免れる法」で、刑事被告人弁護術を教える法学部のスター教授でもあります。「ダメージ」のパティー・ヒューズ(グレン・クローズ)と同じく、勝つためなら手段を選ばない冷血漢。ヒューズの生い立ちや過去が徐々に明かされたように、キーティングが今日に至った経緯も次第に判明しますが、「謎の女キーティングを受講生の眼から描くのがライムズ流」と、ノウォークは群像劇でありながら確固たる主人公を中心に世界が回る語り口を指摘しました。
毎年、受講生の中から数人をキーティング事務所のインターンとして採用する習わしで、名誉職を巡って、7人の新入生がしのぎを削ります。選ばれた5人の前途は有望かと思いきや....殺人事件に巻き込まれて、人生が狂い始めます。パイロットを一度オンライン視聴しただけなので、音声だけで画像が動かない時もあり、細部に偲ばせたヒントを多々見逃したかと思いますが、リーガル・サスペンス+謎が謎を呼ぶミステリー仕立て(「プリティ・リトル・ライヤーズ」風)のドラマです。但し、「スキャンダル」が政界ドラマからメロドラマに変貌を遂げたように、本作も大きく方向転換する可能性が無きにしも非ずです。
【動画】「How to Get Away with Murder」トレーラー
個別ビデオ・インタビューしたデイヴィスは、息を呑むほどの迫力+近寄り難い尊厳+目映いばかりの美しさで、私はたじたじとなってしまいました。「縁の下の力持ち(助演)は卒業。演じたことのないキャラ、どう演じたら良いのか不安になるようなキャラに挑戦したかった」と、デイヴィスは登板について語りました。これまで大人しい役が多かったので、破廉恥で掴みどころの無い「デキる女」はデイヴィスにぴったりかも知れません。但し、「プリティ・リトル・ライヤーズ」ではなく、「ダメージ」になることを祈ります。
2014年版「デキる女」4キャラのうち、どのキャラが「グッドワイフ」のアリシア・フローリック(ジュリアナ・マルグリーズ)のように女として成長し、生きる知恵を授けてくれるでしょうか?
「グッドワイフ」アリシア・フローリック役で、8月25日エミー賞主演女優賞を受賞したマルグリーズ。マルグリーズこそ、今乗りに乗っている「デキる女」? WENN.com