第64回エミー賞授賞式に思うこと - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

ハリウッドなう by Meg


前の記事:
2012年夏のTCAプレスツアー参加ー最終回
次の記事:
2012年大統領選勝敗が決まる前に

第64回エミー賞授賞式に思うこと

(2012年10月30日)

第64回エミー賞授賞式は、日本でも既に放送された筈ですが、「MAD MEN マッドメン」は5連覇ならず、下馬評の高かった「Homeland」「ゲーム・チェンジ」「モダン・ファミリー」の3作品に賞が集中しました。

完全に三極化した授賞式でしたが、喜ばしい「予想外」の受賞者も続出しました。

★ コメディー部門主演女優賞
「Veep」で米副大統領を演じるジュリア・ルイス・ドレイファス。HBOで放送される作品なので、視聴者がどれほどいたのか?という疑問が湧きますが、ドレイファスの実力がATAS会員芸人グループの投票者に受けたものと思われます。ちなみに授賞式終了後、リムジンを待っている間に、「Veep」の助演俳優2人にお祝いを述べ、今後も良い作品にしてくださいと励ましの言葉を送ることができました。

BlogMimura05my.jpg
またも、ATAS会員芸人グループに実力を認められて受賞したジュリア・ルイス・ドレイファス。「Veep」の視聴率アップに繋がるに違いない。 Izumi Hasegawa / PR Photos

★ コメディー部門主演男優賞
チャーリー・シーン降板後「ハーパー★ボーイズ」の主演に昇格したジョン・クライヤー。昨春、’お騒がせ’シーンの番組制作陣への罵詈雑言や奇行が延々と続く中、いかに罵られても一切反応せず、沈黙を守り通した優等生俳優への「労い賞」だったのではないでしょうか?

BlogMimura06my.jpg
’お騒がせ’シーンに「敵側についた小人!」と罵られても、じっと我慢の子だったジョン・クライヤー は業界の鑑だ。主演に昇格しての受賞は感慨も一入だろう。Izumi Hasegawa / PR Photos

5年余り前「ハーパー★ボーイズ」撮影中に一度インタビューしたことがありますが、「仕事に溢れて死のうと思ったこともある」と辛苦を嘗めた体験を語り、故に「仕事があるだけでも有難いのに、ヒット作のキャストの一員であるなんて、夢のよう!」と真摯に語る苦労人であると判明しました。腰の低さが印象的だったクライヤーは、’お騒がせ’シーンとは月とスッポンだと思ったことを、まるで昨日のことのように覚えています。

「ハーパー★ボーイズ」で2006年に助演男優賞を受賞した時以上に、今回の主演男優賞はクライヤーにとって「宝物」に違いありません。クライヤーは面食らった様子でした。助演から主演に昇格して、きっと、絶対無理と思っていたのでしょう。腰の低い苦労人は、ATASの俳優仲間から大いに評価されています。バンザーイ!

★ コメディー部門とバラエティー・スペシャル部門の脚本賞
「Louie」を自作自演するルイ・CKは、昨年、コメディー部門主演男優賞を初め脚本、監督、編集の4部門の候補に挙がっていましたが、残念ながら全部外れ!でした。FX局で放送されているブティック作品(ちなみに地上波局の作品を、私はデパート作品と呼んでいます)ですが、我々評論家仲間の間では初っぱなから大好評の荒削りコメディーです。FX局の社長に言わせると、「脚本から編集まで、何から何まで独りでこなしてしまう万能コメディアン」で、できることなら、ルイ・CKのコピーが数人欲しい!ほど重宝しているとか。

BlogMimura07my.jpg
勉強家ルイ・CKの受賞は、ATAS放送作家グループ の「目」を実証した。ケーブル局のブティック作品でしかルイ・CKの才能は発揮できない。Andrew Evans / PR Photos

今年は、7部門でのノミネートの内、コメディー部門とバラエティー・スペシャル部門の脚本賞に輝きました。ルイ・CKの実生活から生まれるバツイチ・パパの泣き笑い人生に共感する放送作家が大勢いたからに違いありません。

2011年に、プレスツアーでCKと話しましたが、余りの好評に面食らっている様子が新鮮でした。「学ぶことはまだまだ一杯あるし、成長して行かなければ良い作品はできない」と、シーズン4は2014年春まで再開しないと、つい先日発表がありました。シーズン1の新鮮さを取り戻すため、じっくり練った良いものを書きたいので、今年は全米をどさ回りしてネタを仕入れると同時に、テレビ制作の狂気の沙汰からしばらく離れたいという理由です。エミーを獲得したからできる勇気ある行為なのでしょうか?目移りが甚だしい「新しがり屋」の若者は視聴者ではないから?かもしれません。勉強家ルイ・CKの受賞後の裏話でした。

★ ドラマ部門主演男優賞
「ブレイキング・バッド」で受賞2度目のアーロン・ポール。2009年、10年、12年と3回ジェシー役で候補に挙がりました。

BlogMimura08my.jpg
2度目の受賞より婚約したことの方が嬉しそうなアーロン・ポール(左)と婚約者のローレン・パスキアン。 Andrew Evans / PR Photos

09年に受賞できると私は思っていたので、ポールの実力を認めないATAS会員芸人グループの投票者は「どこに目をつけてる!?」とムカついた一例でした。2010年冬のプレスツアーでポールにATAS会員として申し訳ないと謝ったほど。「そんなこと言ってくれるのは、君だけだよ!」と感謝感激の抱擁を頂戴してしまいました!だからと言う訳ではありません。クライヤーと同じく、一生懸命仕事に打ち込み、こんな仕事させてもらえるなんて!と思っている俳優が受賞すると、ATAS会員芸人グループの投票者の「目」に拍手喝采してしまいます。受賞スピーチでポールがクリエイターとライターチームに「早々に殺さないでくれて、ありがとう!」と感謝の意を述べ、会場の笑いを誘っていました。元々、数話で殺される筈の役だったんですね?

7月にブログで報告した、放送局や撮影所が主催した根回しイベントが功を奏して、メインカテゴリーにノミネートされたのは、「アメリカン・ホラー・ストーリー」「New Girl 〜ダサかわ女子と三銃士」「MAD MEN マッドメン」の3作品のみでした。最優秀作品賞に輝いた「Homeland」と「モダン・ファミリー」は、ATASが「舞台裏」シリーズの一環として、会員向けにパネルインタビューを実施しました。

今年は、レッドカーペットたけなわの時間を見計らって、会場に到着しました。一般客用通路(レッドカーペットの外側)も人の波は4列ほど。左端の列は足早に会場へ急ぐ人用、中2列は三々五々の物見遊山組、そして右端はレッドカーペットに一番近く「折角来たからには、絶対にスターと記念写真を撮るぞ!」の決死隊用です。参加初年度に、イブニング・ドレスの裾を踏まれて、ビリっ!を耳にした苦い体験があるので、この決死隊列は避けてきました。今年は故意に短いドレスを着用し、フットワーク軽やかに「いざっ!」と飛び込みました。案の定、前方不注意で玉突き事故が多発し、前進が不可能に。

私の前を歩いている参列者が3歩毎に立ち止まっては「ハイ、ポーズ」するので、堰止めの張本人ではない私が、警備員に怒鳴られる、二の腕を掴まれるのとばっちりを受けました。前進できないのを良いことに、会場まで目を皿にして顔見知りのスターを探しましたが、目撃したのは入口近くで、ケリー・ワシントンと、ジョン・ハムとジェニファー・ウェストフェルトのみでした。ワシントンは誰かを探している様子でしたが、振り向いた瞬間に目が合い、挨拶を交わしました。レッドカーペットでメディアの取材を受けているイブニング・ドレスの後ろ姿を見て、誰だろう?と想像しつつ、通り過ぎるだけに終わってしまいました。

翌日、コニー・ブリットンが身分証明できず、警備員に危うく追い出されそうになっている姿がテレビで報道されました。「アメリカン・ホラー・ストーリー」で主演女優賞候補に挙がっていただけでなく、プレゼンターでもあったにも関わらず、この不始末!ブリットンを知らないなんて、警備員の風上にも置けぬ不届き者。聞いてなかったなんて、言い訳になりません。

BlogMimura10my.jpg
コニー・ブリットンを知らない!?今年の警備員は質悪し。 Andrew Evans / PR Photos

ところで、「MAD MEN マッドメン」のクリスティーナ・ヘンドリックスが今年選んだドレス、お目に留りましたか?毎年、余り趣味の良いドレスを選んでいないなーとは思っていましたが、今年のシャンペン色のドレスは、何と表現したものか....一般的に、デザイナーに言わせると、バランスのとれていない体型が一番デザインしにくいとか?バストが余りにも豊満だと、バランスがとれないのは解りますが、私はパステルカラーを避けて、原色できりっと締めるべきだと思います。

BlogMimura09my.jpg
クリスティーナ・ヘンドリックスの「持ち味」を活かしたドレスは、両刃の剣となった。 Andrew Evans / PR Photos

このドレス姿で、英国のビデオ・ジャーナリストのインタビューを受けるヘンドリックスの映像が、数日後放送されました。

ジャーナリスト「ふくよかなグラマー女優として有名ですが....」
ヘンドリックス「は?」
ジャーナリスト「ふくよかなグラマー....」

ヘンドリックスは、マイクを外し、呆気に取られているジャーナリストを尻目に「もう、沢山!」と捨て台詞を残して立ち去りました。

虫の居所が悪かったのでしょうか?それとも、豊満な肉体を売物にして名を馳せたヘンドリックスも、遂に限界に達したのでしょうか?ある「持ち味」を売物にすると、いつまで経っても卒業できないのは、百も承知の筈です。因果な商売を選んだのはあなたでしょ!とヘンドリックスに意見したいと同時に、つたない英語で質問する外国人ではないのですから、もう少し表現を変えて二度目の質問をするべきでは?と、機転の利かないジャーナリストにも難ありかなー....と思いました。今後のインタビューの参考にさせていただきます。


前の記事:
2012年夏のTCAプレスツアー参加ー最終回
次の記事:
2012年大統領選勝敗が決まる前に

最近の記事

▲ TOP