サラ・シャヒがきらりと光るNBCの新作「Reverie」。華奢で芯の強いヒロインが綴る心温まるドラマは、テクノロジー社会から消え失せつつある’共感’を美しい映像で描く - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

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サラ・シャヒがきらりと光るNBCの新作「Reverie」。華奢で芯の強いヒロインが綴る心温まるドラマは、テクノロジー社会から消え失せつつある’共感’を美しい映像で描く

(2018年6月28日)

2017年秋に始まったドラマが完了し、時間の無駄的、たわいも無いリアリティー番組で埋め尽くされる夏に突入しました。何も観るものが無いので、DVDを借りて観るのが恒例となっていましたが、今夏は何故か様子が違います。異例の2018年夏の皮切となったのが、5月30日にNBCが放った新作「Reverie」です。


英文評


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「Reverie」の主要キャスト5人のポスター。(前列左)マラ役サラ・シャヒ(イラン系アメリカ人)、(後列左から)ポール役センディル・ラママーシー(インド系)、モニカ役キャスリン・モリス(白人)、(後列中央)チャーリー役デニス・ヘイスバート(黒人)、アレクシス役ジェシカ・ルー(中国系)。前代未聞の人種多様性を実現したドラマ。キャスティング・ディレクターにエミー賞を贈りたい。(c) NBCUniversal


毎年、欠かさずチェックするパイロット撮影リストの中で、一際私の興味を引いたのは、主演女優、テーマ共に魅力的なドラマでした。この時点では、タイトルはまだ付いておらず、サラ・シャヒ・プロジェクトとなっていたと記憶しています。「リーガルに恋して」で好演したシャヒのプロジェクトなら!と、画面に登場する日を指折り数えて待っていました。ご存知のように、最近斬新なアイデアの異色作がめっきり影を潜め、リメイク、スパイ、世の終わり等お決まり作品がこれでもか!と登場するので、俳優で選ぶしかありません。



同時に、かねがね私は夢をテーマにドラマを書きたいと思っていました。アイデアを如何に映像化すれば良いのか、仕掛けを思い付かず、ついに今日まで書かず仕舞いになっています。タイトルになったreverieとは、耳慣れない言葉ですが、空想、夢想、幻想という意味です。夢がテーマの本作を心待ちにしていたのは、やばい!先を越されたか?の妬み心が無きにしも非ずだったのですが...


NBCから送られて来たパイロットは、私が書きたいと思っていた夢の概念からは程遠い、SFスリラーに仕上がっていました。オニラ・テック社が開発中の「Reverie」は、不可能を可能にするバーチャル・リアリティー・プログラムです。負け組の惨めな生活を捨て、自ら創造した世界で、思い出に浸る/夢を叶える/現実では物理的に不可能な望みを実現する等、自分で書いた脚本に主演できるVRプログラムなのです。ところが、プログラムを使い始めた初期ユーザー7人が、逃避先の虜になり、昏睡状態に陥りました。ベンチャー起業投資家を代表するモニカ(キャスリン・モリス)にせっつかれて、警備担当のチャーリー(デニス・ヘイスバート)が、元部下のマラ・キント(シャヒ)をリクルートする所からドラマが始まります。ユーザー独自の世界に人質解放交渉人マラを送り込んで、悪評が立つ前に意識を回復させなければ、会社の将来が危ういからです。勿論、各ユーザーがどのような心理状態で、何を目的に現実逃避するのか、何故プログラムに囚われの身となっても、現実に戻ろうとしないのか?等を、関係者に聞き込み捜査するのもマラの仕事です。


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(左から)モニカ(モリス)は前半は投資家を代表する謎の女、ポール(ラママーシー)は夢の専門家、マラ(シャヒ)は人命救助のプロだがPTSDを薬物やアルコールで遣り過す。アレクシス(ルー)は、VRを構築したコンピュータオタク、チャーリーはマラのトラウマを気遣う守護神的存在で、頼もしく且つ優しい上司。(c) Paul Drinkwater/NBC


マラは、バーチャル・リアリティー・プログラムを発案発明したコンピュータの天才アレクシス(ルー)と夢学者ポール(ラママーシー)から特訓を受けて、プログラムの虜になったユーザーの世界に侵入します。果たして、現実に引き戻すことができるのでしょうか?心理学や読心術を駆使して人命救助に携わるマラですが、2年前に身内を銃殺され、アルコールと薬物で心痛を回避し、ストレスの少ない教員職で生計を立てていました。しかし、奈落の底を体験、喪失感や自責の念に浸って来たマラだからこそ、ユーザーの痛みや悲しみをひしひしと感じます。そして、上から諭したり、非難することなく、ユーザーと共に、痛みや悲しみのどん底でうずくまってくれる存在なのです。


テクノロジーにのめり込んで携帯やコンピュータから目を離さない若者に、同情と共感は似て非なるもの!を実証する珍しいドラマです。希望的観測かも知れませんが、相手の痛みや悲しみを否定せず、「不幸中の幸い」や解決策を押し付けず、同等の目線で気持ちを汲み取る/分かち合うことが如何に人間関係の潤滑油になるかを読み取って欲しいと思います。もっとも、生きる知恵は歳と共に蓄積される訳ではありません。無駄に歳だけとって、何も学習していない人が多いので、共感度の高さは歳に比例するとは限りません。テクノロジー社会から急速に消え失せて行く共感を、AIに教える試みが最近話題になっていますが、心して生きた体験がなければ、人間でさえ真の共感を表現できないのに、AIなど以ての外!と思うのは私だけでしょうか?


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NBCの華奢で芯の強いヒロインは、(左)マラ(シャヒ)と、ルーシー(アビゲイル・スペンサー)の2キャラだったのに、「タイムレス」は打ち切られてしまい残念無念。 WENN.com


マラを初めて観た時、「SFは苦手でも『Timeless』は面白い!」(2016年10月10日)でご紹介した「タイムレス」の主人公ルーシー(アビゲイル・スペンサー)を彷彿させるキャラだと思いました。「Reverie」クリエイターも制作陣も口を揃えて、「ルーシーと同様のヒロイン」だと認めています。二人に共通するのは、華奢な割に芯が強く、アクション・ヒロインを難なくこなせるキャラと言う点でしょう。しかし、6月22日「タイムレス」は、正式に打ち切られてしまいました。数奇な運命は今に始まった訳ではなく、シーズン1が打ち切りになって2日後に更新発表があり、出だしから躓いた感があったので、覚悟はしていました。シーズン2が、ヘディー・ラマー、ハリエット・タブマン、グレイス・ハミストン等、米国の歴史に貢献した影の存在である女性を次々と紹介し、切り口の違う希少価値の高いドラマだったので、残念無念です。どこの国でも勝者目線の歴史が語り継がれますが、「タイムレス」は白人男性以外の視点から語る、目からウロコ満載のシーズン2だっただけに、葬り去るのは心苦しいドラマです。「Reverie」がしばらく続くことを期待するしかないようです。


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