「Crazy Ex-Girlfriend」シーズン2進行中。奥の深い名曲をご紹介
今秋もエミー賞授賞式が終了した翌9月19日から新番組/継続番組が開始/再開されましたが、CWは例年の如く、10月1週目まで再放送や夏の番組で繋ぎました。
新番組で言うと、「No Tomorrow」が10月4日、「Frequency」が10月5日に放送開始となりました。今年でシーズン3を迎えた「Jane the Virgin」は10月17日、「Crazy Ex-Girlfriend」シーズン2は10月21日から再開されています。
「Crazy Ex-Girlfriend」については、15年9月7日の「レイチェル・ブルーム、プリヤンカー・チョープラーの魅力でお薦め!」に始まり、16年4月15日「エミー賞根回しイベント」、更に16年9月6日の「今夏のプレスツアーのハイライト」として作品のみならず、鬼才ブルームについてもご報告してきました。
8月6日、第32回TCA賞コメディー部門の個人賞を受賞したブルーム。今後の活躍が大いに期待できる歌って、踊れて、芝居が出来る「トリプル・スレット+α」である。 (c) Getty Images
レベッカ(ブルーム)はマンハッタンの法律事務所で、出世街道まっしぐらのデキる女ですが、母親が敷いたレールに乗っかっていただけで、幸せとは何か?自分は今幸せか?等、自分探しの旅に出ることなど考えたこともありません。そんなある日、街でばったりジョシュ(ヴィンセント・ロドリゲス3世)と再会します。10年前に逃がした魚の大きさに気付いたレベッカは、運命の糸に引かれて、ジョシュの故郷カリフォルニア州ウエスト・コヴィーナに引っ越し、焼け木杭に火をつけるべく、元カレ奪還作戦を開始します。「フェリシティ」と同様、初っ端から頼みもしないのに言い寄って来るのは、ジョシュの親友/しがないバーテンのグレッグ(サンティーノ・フォンタナ)。職場のポーラ(ドナ・リン・チャンプリン)は、公私共に平穏無事な毎日を送っていましたが、ロマンとスリルを求めて、レベッカのジョシュ奪還作戦を煽るのみでなく、嬉々として手を貸します。
レベッカの狂気の沙汰を集めたコラージュがシーズン1のポスターだった。
シーズン1最終回。レベッカの恋い焦がれる気持ちが遂にジョシュに伝わり、ディズニー風のハッピーエンドで一件落着かと思いきや....レベッカは幸せの頂点で「追いかけてきたのよ」と、口が裂けても言ってはならない一言を発してしまいます。ジョシュの驚きと戸惑いの混じった顔で、シーズン1が幕を閉じました。
爆弾宣言がもたらした結果は如何に?待ちに待ったシーズン2が再開され、只今進行中です。10月27日の放送開始前に、英文評を公開しました。
英文評はこちら
本作のクリエイター・チーム(アライン・ブロッシュ・マッケンナとブルーム)は、シーズン毎にテーマを決めて展開しています。シーズン1はNYからジョシュを追いかけてきた事実を、屁理屈をこねて飽くまで’否定’するレベッカの自己防衛手段を、シーズン2は恋に一歩踏み込んだレベッカの’確信’を描くと言います。
シーズン2は、焼け木杭に火がついて、想いが伝わったと勘違いするレベッカの新テーマソングで始まりました。「♩恋は盲目、狂気の沙汰は♬私の所為じゃない、何しろ私は♪恋してるんだもの♩♪」的内容を、可愛く、無邪気に歌います。’夢中’だったら、何をしても良いってもんじゃないんだけどな~と思いつつも、余りにも愛くるしいレベッカがファンタジー(非現実)を歌うので、う~ん、ま、良いか?許しちゃう!と思わせるところが、味噌です。
Crazy Ex-girlfriend Season 2 Theme Song
更に、シーズン2プレミア回から、「スッゴイ!鋭い!!天才!」と唸ってしまったのが「Love Kernels」と題する曲です。彼氏の言葉の端々に思いを読み取ろうとする、何気ない無意味な’約束’から二人の将来を読み取ろうとする、片想いの女性の健気な努力(=実は、自尊心の不在)、蹴られてもすがりつく哀しさや浅ましさを、トウモロコシの粒やしずくに例えています。若い頃の自分の姿を見るようで、思わず目を背けたくなりますが、女の悲しいサガを直視しなければ自分探しの第一歩を踏み出すことはできません。片想いを両想いにすることは、不可能。愛情は買うことも、強いることもできません。
Crazy Ex-Girlfriend | Love Kernels | The CW
本作はロマコメ・ミュージカルではありますが、自らうつ病を患ったこともあるブルーム曰く、「恋愛って何なのか?自分を100%受け入れる前に、人を愛せるのか?がテーマよ」と奥深い発言をしたことが思い出されます。自分を100%受け入れずして、片想いに悩んでいる方、彼氏に心を満たしてもらおうとすがりついている女性必見の名曲です。詩は意味深でありながら、さらっと聞いていると現実的で笑えてしまうのが、本作の作詞/作曲家チーム(アダム・スラセンジャー、ジャック・ドルゲン、ブルーム)の偉大さです。恋愛真っ只中の若者には、不可解?かもしれませんが、いずれ解る時が来ますよ!恋愛入門講座のオープニングに使いたい名曲です。
11月4日に放送された第三話では、ブルームの歌唱力以上に演技力が光る「The Math of Love Triangles」が披露されました。三角関係をどのように解消するか、ジョシュ/グレッグのいずれを選ぶべきかをマリリン・モンロー風に、甘ったるく、幼児っぽく歌います。一方、インテリを象徴する数学者がバックシンガーを務め、三角形を数学的に説明しようと試みますが....明らかに「ダイアモンドは女の親友」をもじったものですが、そこはブルームのこと。元の楽曲を知らなくても、十分に楽しむことができます。
Crazy Ex-Girlfriend | The Math of Love Triangles | The CW
一見軽いノリながら、底深いロマコメ・ミュージカル「Crazy Ex-Girlfriend」です。今シーズンも、異ジャンルから数々の名曲が登場しそうです。レベッカが100%自分を受け入れるのは、もう先送りにして、それまでの目を覆いたくなる数々の失敗を満喫したいと思います。いずれ、レベッカに見合う、素敵な王子様が現れることを祈って....現実に、王子様は現れませんが、これは飽くまでロマコメですから、夢物語で終わっても良い筈です。