地上波局2014年秋の新番組成績表
9月21日から追々始まった地上波5局の新番組24本の中間報告です。今年は、パイロットだけ放送して打ち切りという極端な例はなく、打ち切り第1号は、10月末まで発表がありませんでした。4〜6話と進行中でしたが、打ち切り後は尻切れとんぼではなく、V.O.D.やHuluで結末を視聴できるようになりました。
■ ABC
ドラマ
◇「Forever」シーズン1(22話)は一先ず安泰
「スリーピー・ホロウ」医療版のような不死身の検察官のドラマ。私は、今年初の打ち切りと予想していたのですが…どこがどう受けたのでしょうか?
◇「How to Get Away with Murder」シーズン1は、15話制作。11月末までに9話を放送してシーズン1前半を終了、後半6話は来年1月末までお預け!
毎週木曜日はションダ・ライムズ日で、午後8時「グレイズ・アナトミー」9時「スキャンダル」10時に「How to Get Away with Murder」(「HTGAWM」と省略)とプライムタイムを独占しています。
だらだらと続いているだけの「グレイズ」、先シーズン後半あたりから輝きを失ってしまった「スキャンダル」の後に、「HTGAWM」が颯爽と登場して魅了してくれるものと期待していたのですが….正直な所、嘗ての「スキャンダル」ほど吸い込まれるほどの迫力のないメロドラマで、がっかりです。「ダメージ」の足下にも及びません。私なりに分析したみたところ、
1)善良なキャラが独りもいない
2)未だにキャラの名前が覚えられないほど、キャラに魅力がない
3)ヴィオラ・デイヴィス演じるアナリースは「ダメージ」のパティー・ヒューズほど冷血漢ではなく、仰天するほど「怒」と「哀」をあらわにする
の3点が災いしています。「HTGAWM」も「スキャンダル」も「ダメージ」路線ではなく、卑劣人間のオンパレード「マッドメン」路線に乗ってしまい、残念としか言いようがありません。
「How to Get Away with Murder」で、テレビ初主演を果たしたヴィオラ・デイヴィス。感情の波を生々しく演じ、冷血漢ではないことをあらわにし過ぎて興醒め。過ぎたるは及ばざるが如し? WENN.com
コメディー
◇「Black-ish」シーズン1は24話確約
2話以降、ネタ切れ感があり、最近はV.O.D.で視聴する気にもなりません。人種をどう自覚するか?というアイデアから生まれた異色コメディーは、叩き上げ世代vs.裕福に育った世代の葛藤にすり替わってしまい、単なる家族コメディーに成り下がってしまいました。アンソニー・アンダーソンとトレイシー・エリス・ロスの演技が、極端に大袈裟で観るに耐えないことも大きな要因です。
◇「Cristela」シーズン1は22話確約
アイデアから生まれた「Black-ish」とは異なり、コメディアンのクリステラ・アロンソが脚本を書いているだけあって、キャラベースの笑いが詰まったコメディーです。ダラスを舞台にメキシコ系アメリカ人クリステラが弁護士を目指し、職場でも家庭でも悪戦苦闘する姿を描きます。クリステラ自身の体験を基に書かれているだけに、取って付けたようなわざとらしさが無く、安心して観られる作品です。弁護士を目指している割には、ブルーカラー色の濃いところが少々気になります。
◇「Manhattan Love Story」今年初の打ち切り作品。未放送の7話はHuluでストリーミング、あるいはV.O.D.で視聴可能
ロマコメがいかに難しいかを再度証明した感があります。配役にも難があったと思いますが、未放送分を観て、ABCの決断は正しいと思いました。とにかく、主役キャラに魅力がないので、これ以上続ける意味がありません。
◇「Selfie」今年、4本目の打ち切り作品。V.O.D.では未放送分3話のみ視聴可能だが、Huluストリーミングでは、おまけ11〜13話が視聴できる
デジタル時代の「マイ・フェア・レディー」は概念としては面白いし、カレン・ギランが浅はかを絵に描いたような現代っ子を愛くるしく好演しましたが、早々にネタ切れ感がありました。本作のクリエイターは、「テクノロジーが男女関係にどのような影響を与えているか?を描きたかった」と発表しましたが、概念からコメディーをひねり出すと、すぐに息切れするという2本目の例(1本目は同局の「Suburgatory」で、まだ継続されていますが、視聴率は激減)を生み出してしまいました。
ジョン・チョウは、ロマコメ史上初のアジア系アメリカ人を好演しましたが、マーケティングの天才と空気の読めない仕事の鬼オタクの相反する気質をどう演じたものか、混乱しているように見受けました。
但し、未放送分3話=つまりシーズン1の終盤に、生徒イライザと先生ヘンリーの心の触れ合いが描かれていて、イライザがいかに成長するのか、先を観たかったな〜と残念に思いました。Huluで残り3話を観るしかありません。
これからやっと始まる二人の関係を目撃できないのは、心残りです。ABCにもう少し我慢して欲しかったな〜と思います。
カレン・ギラン(左」は、「Selfie」で実力を実証したので、すぐに次作が決まるに違いない。一方、相反する性格がしっくり来なかったヘンリー役のジョン・チョウは、「スリーピー・ホロウ」の後半に復帰か? WENN.com
■ CBS
ドラマ
◇「Madam Secretary」シーズン1は22話確約。11月30日に第11話が放送され、シーズン1前半終了、後半は来年1月4日再開
後続番組の「グッドワイフ」と同様、視聴者は50代以上です。今シーズン「グッドワイフ」が、法曹界から政界に焦点を置き換えて、過去のシーズンほど面白くなくなったので、「Madam Secretary」の視聴率をそのまま横滑りさせて欲しいものです。
政界ドラマとは言え、「スキャンダル」と違って、過半数のキャラが善良な人間として描かれていて、物足りないという人もいるかもしれません。マッコード国務長官(ティア・レオーニ)は職場では四面楚歌、家庭では夫婦円満ながら娘や息子に振り回される母親です。
◇「NCIS: New Orleans」シーズン1は22話確約
場所を変えても、この手のドラマは似たり寄ったり!もう少し魅力ある俳優が配役されていれば、試してみようかと言う気にもなるのですが….
◇「Scorpion」シーズン1は22話確約
若者層に受けたのでしょうか?犯罪ドラマ局の名に恥じない内容ではありますが….
◇「Stalker」シーズン1は22話確約
ストーカー心理が面白い/楽しい/為になると観ている視聴者がいるという証拠ですが、視聴率を見る限り、ヒットとも駄作とも言えないまあまあの成績。シーズン2は多分ないものと思われます。
コメディー
◇「The McCarthys」3話放送。視聴率低迷に関わらず、3話更新。
ションダ・ライムズ日の裏番組だから、この視聴率なのでしょうか?個人的には、観るに耐えないコメディーだからだと思います。とにかく、笑えません。
■ CW
ドラマ
◇「The Flash」シーズン1は23話確約
同局にとっては、「アロウ」に続くヒット作です。「アロウ」とのクロスオーバー回もあり、好調です。
コメディー
◇「Jane the Virgin」シーズン1は22話確約
CWが放送開始前に、追加制作を発表して肩入れした甲斐あって、ゴールデングローブ賞コメディー・シリーズ部門賞作品賞にノミネートされました。更に、主人公ジェーンを演じるジーナ・ロドリゲスが女優賞にあがっていることは、実に喜ばしいことです。
視聴率が低迷していても、ロドリゲスの人柄が受けてノミネートに繋がったに違いありません。「ブルース家は大騒ぎ」のように、評論家だけに受けているのかも知れません。
「Jane the Virgin」ジーナ・ロドリゲス。大袈裟な演技で悪名高いテレノベラの主人公ジェーン役だが、さらっとした自然な演技が新鮮!エミー賞は候補にもあがらないと思うので、ゴールデングローブを獲得して欲しい期待のニューフェースだ。 WENN.com
■ FOX
ドラマ
◇「Gotham」シーズン1は22話確約
今秋、FOXで唯一高視聴率を獲得している作品。シーズン2継続は間違いないでしょう。逆に、2013年のヒット作「スリーピー・ホロウ」は内容の濃さに反比例して、視聴率は減少しています。ファンはどこへ行ってしまったのでしょう?
◇「Red Band Society」視聴率は低迷のまま、10話放送後、3話更新
お涙頂戴ドラマは、現代人にはしんどいのでしょうか?人生の教訓が若者には鬱陶しい?シーズン更新はほとんど見込みありません。
◇「Gracepoint」限定シリーズ13話で終了
「ボーンズ 骨は語る」の後続番組にも関わらず、視聴者の関心を引く事ができませんでした。英国版オリジナル「Broadchurch」と、主人公が同じという配役に問題があるのではないでしょうか?
12月16日、13話で完了、更新はしないと発表がありました。夏のプレスツアーで、限定シリーズ=視聴率次第で継続可能シリーズとあるプロデューサーが種明かししたことが思い出されます。
コメディー
◇「Mulaney」シーズン1の契約本数16話を、13話に削減
放送日を誰もが忌み嫌う金曜日夜に替えられたことが、既に継続しないという局側の真意を物語っています。現在、残りの逸話を消化中。
■ NBC
ドラマ
◇「Constantine」13話確約で、放送開始は10月24日
「グリム」とペア放送にして、NBCは大いに期待していたようですが、視聴率がとれず、シーズン1の契約通り13話を消化して終了すると発表がありました。シーズン更新はほとんど見込みありません。
◇「State of Affairs」13話確約で、11月17日放送開始
12月15日に第5話が放送されましたが、本作もシーズン1の契約通り13話を消化して終了するのではないでしょうか?「ホームランド」地上波局晩を目指しているのは解りますが、迫力が….姑になる筈だったペイトン大統領とチャーリー(キャサリン・ハイグル)の関係がストーリー展開の邪魔をしているように思います。更に、9月に放送開始した「Madam Secretary」で、政界ドラマはもう沢山!と判断した視聴者も多いと思われます。
◇「The Mysteries of Laura」シーズン1は22話確約。来年1月7日に11話目が再開
デブラ・メッシングがとにかく輝いていて、「ウィル&グレイス」や「スターター・ワイフ」ファンには嬉しいシリーズ復帰です。猫の手も借りたいほど忙しいシングルマザーは、少々旧いとは思いますが、事件捜査も伝統的な聞き込みに依存している作品なので、違和感はありません。残り11話が楽しみですが、シーズン2更新なるか?という所です。視聴者の年齢が高いことを理由に打ち切られた番組は山とありますから….
「The Mysteries of Laura」で、ローラを好演するデブラ・メッシング。テクノロジーや超能力に頼らず、昔ながらの聞き込みと推理で事件を解決する伝統的な語り口が良い。 WENN.com
コメディー
◇「A to Z」13話で制作打ち切り
◇「Bad Judge」13話で制作打ち切り
上記2本は、来年早々に4話放送して完了します。ロマコメ(「A to Z」)って、本当に難しいものなんですね。
◇「Marry Me」5話更新で、シーズン1は18話確約
毎回、視聴率がどんどん下がっているにも関わらず、更新ですか?残り10話は来年放送予定。
来春の新番組が毎日続々と配達されてきます。1月のプレスツアーを控えて、パイロットを年末年始に視聴しますが、面白そうな作品があればご報告します。