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ロマコメの主役にジョン・チョウ!「Selfie」は特記の価値あり

(2014年9月25日)

前回は黒人文化を通じて、米国社会を描く「Black-ish」をご紹介しましたが、9月30日開始の「Selfie」は、主役がジョン・チョウだからこそ、特記の価値があります。デジタル時代の男女関係の機微を面白おかしく描く、時を得たロマコメは「マイ・フェア・レディー」21世紀版と言えます。

イライザ・ドゥーリー(カレン・ギラン)は、フォロワー26万人余りのソーシャルメディア界のスーパースター。醜いアヒルの子が、努力の結果スターの座にのし上がりましたが、人間としては品格も常識もない、浅はかを絵に描いたような現代っ子です。つき合い始めた彼氏が既婚者と知り、所構わず演じた失態が、会社の同僚の手で、一気にネット上拡散されてしまったから大変!地に堕ちた天使に救いの手をさし伸べてくれるファンがいると確信していたイライザですが、結局、フォロワーもファンもバーチャルでしかない上、隙あらば陥れてやろうと待ち構えていたのだと気付きます。バーチャル世界でスターダムを満喫していたイライザには、現実社会で普通の生活をする知恵も能力も備わっていません。

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ソーシャルメディア界のスーパースター、イライザを演じるギラン。米国英語はテレビを観て覚えたが、「デジタル/ソーシャルメディア語は、聞いたこともない言葉だらけ!毎日が勉強よ」と明かした。 WENN.com

イライザが、イメチェンに無理矢理師事したのは、職場のマーケティングの天才ヘンリー(ジョン・チョウ)です。会社の製品のイメージ挽回キャンペーンで大成功を収めたヘンリーですが、’デジタルの申し子’のイメチェンなど、無理!無駄!と拒否しつつも、何故かイライザ旋風に巻き込まれて行きます。

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ヘンリー役を演じるチョウ。ツイッター等で時代の流れには乗っているものの、「何もかもリアルタイムは、疲れる」とヘンリーの観点に賛同。更に、作家ジョナサン・フランゼンの言葉を引用して、ソーシャルメディアの狂気の沙汰を指摘した。 WENN.com

しかし、'マーケティングの天才'ヘンリー自身も完璧とは言えません。杓子定規な仕事の鬼ヘンリーも決して社交的とは言えず、とかく籠りがち。オタク性を察した上司の策略は、女性同伴を条件に娘の結婚式に引っぱり出すことでした。出席を強要されたヘンリーが思い付いたのは、社交術の訓練と称して、イライザに化粧、髪型、服装まで事細かに指示して、披露宴に連れて行ける清楚な女性に仕立て上げることでした。しかし、付け焼き刃は即座に剥げて....デジタル依存症イライザはともすれば、バーチャル界に逃げ込む悪い癖があります。

【動画】「Selfie」トレーラー

クリエイターのエミリー・キャプネックは「携帯やタブレット等テクノロジーが男女関係にどのような影響を与えているかを描きたいと思った」と明かしました。更に、デジタル時代のロマコメを創作している過程で、淑女教育や師弟関係という切り口は「21世紀の『マイ・フェア・レディー』だと気付いた」と言います。

スコットランド人女優ギランはお国言葉を使わず、米国英語でイライザ役に挑戦していますが、「カレンのスコットランド語って、何となく嘘っぽいし、ムラがあるのよ」とコメントするキャプラン。「それにスコットランド人が同僚から村八分にされたら、人種差別になってしまって、全然違う話になるでしょ?」とも説明しました。

特記すべきは、韓国系アメリカ人俳優チョウが、ヘンリー役に抜擢されたことです。家族コメディーの主役にアジア系が配役された前例はありますが、ロマコメの主役は前代未聞!なのです。

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ギラン(左)とチョウ。チョウは「ドラマに出ているとコメディーに、コメディー登板が決まったら、ドラマに出たくなる、分裂症的性格なんだ」と笑うが、特にロマコメの男性役に起用されたことに関してのコメントはない。そこが一番大切なポイントなのに! WENN.com

「キャラの進化が本作のテーマ」とキャプランは言いますが、よくよく考えてみると、キャラの設定にかなり矛盾があります。自己中で中味ゼロのナルシストに、製薬会社の営業(MR職ではないかと思います)など務まるのでしょうか?社交性のないマーケティングの天才など、あり得るのでしょうか?ソーシャルメディアの功罪は、ヘンリーが痛い所を突いていて、’デジタル移民’世代には納得が行き、大いに笑えますが、キャラの設定には大いに難あり!です。

ロマコメの主役に初めてアジア系俳優が起用されたことが、進歩なのです。但し、「Selfie」が何シーズンも続くためには、キャラの矛盾やネタ切れを早急に解決する必要があると分析しました。


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