差別撤廃宣言には、まだまだ程遠い!エミー賞 - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

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差別撤廃宣言には、まだまだ程遠い!エミー賞

(2015年9月29日)

第67回エミー賞授賞式が9月21日、無事終了しました。例年、誰が受賞するかを予想して欲しいと依頼されますが、今年は本サイトのスペシャル動画企画「第67回エミー賞授賞式直前のハリウッドに行ってみた!ハリウッドの達人に聞く!エミー賞授賞式の楽しみ方編」の第1回~第4回でノミネートされている俳優の中で、受賞して欲しい!と切望している人の名前を数人あげました。

どうでも良い年が何年か続き、今年も希望的予想は一応あったのですが...9月18日に思い立って、好みに執着しない現実的な予想を書き出しました。
最優秀ドラマ:「ゲーム・オブ・スローンズ」
最優秀主演男優賞:カイル・チャンドラー
最優秀主演女優賞:ヴィオラ・デイヴィス
最優秀助演男優賞:ピーター・ディンクレイジ
最優秀助演女優賞:エミリア・クラーク

最優秀コメディ:「Transparent」
最優秀主演男優賞:ジェフリー・タンボー
最優秀主演女優賞:ジュリア・ルイス=ドレイファス
最優秀助演男優賞:トニー・ヘール
最優秀助演女優賞:アリソン・ジェニー

この予想一覧表を手に、放送を観たところ...
最優秀主演男優賞:ジョン・ハム
最優秀助演女優賞:ウゾ・アドゥーバ  
最優秀コメディ:「Veep」
の3賞を外しましたが、打率は7割と過去最高を記録しました。

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悲願のエミー賞を手にしたジョン・ハム(左)は、個人名を長々と羅列して謝恩スピーチをした。愛犬の名前まで含まれていたと後で判明。カイル・チャンドラー(右)に2本目のエミー賞を持って帰ってもらいたかったのは私だけではない。 WENN.com

最優秀主演男優賞の本命はハムと噂されていましたが、高視聴率を獲得した「HOUSE」で熱演したヒュー・ローリーが毎年ノミネートされていたにも関わらず、投票権を握っているテレビアカデミー俳優グループは、今年で最後だからと言うお情け票を投じなかった過去の実例がまだ記憶に新しいからです。とは言え、私が長年肩入れしてきたチャンドラーに2本目のエミーを手にして欲しかった!が本音です。

司会のアンディ・サムバーグは、ハムが舞台を去る後ろ姿に「僕はカイル・チャンドラーを応援してたんだけどな~~」と遺憾の意を表しました。私の言いたかったことを、そっくりそのまま、最高のタイミングで口にして頂いて、感謝感激雨霰で~す。サムバーグの本音だったように見受けたので、今まではどうでも良かった俳優ですが、今後サムバーグを応援しよう!と思いました。

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アンディ・サムバーグは、誰もが神経過敏になっている’差別’にさりげなく、嫌味なく触れ、好評を博した。「チャンドラーを応援していた」と司会者には珍しく私見を告白した点だけでも、私の世界では株が上がった。 WENN.com

また、「Transparent」を最優秀コメディと予想したのは、今年はトランスジェンダーの年だからですが、意外にも私の大好きな「Veep」が初受賞しました。主演男優賞は「Transparent」のジェフリー・タンボーが受賞しましたが、パーティーの席で「これで少しは視聴者が増えると良いのですが」と述べ、ストリーミング配信は誰が観ているか分からないという地上波局やケーブル局の懸念を証明してしまいました。

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「Transparent」のトランスジェンダー役で、主演男優賞を受賞したジェフリー・タンボー。「意欲作に挑戦して、人生が変わった」と述べた。 WENN.com

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最優秀コメディ賞は、2012年から4年連続ノミネートされた「Veep」が受賞!英国人制作陣は「米政界を風刺して、ドルを稼がせてもらえて最高!」と会場を沸かせた。チームワークの良さ+きめ細やかな手作り感+文句無しの出来栄えが、受賞に繋がったと読む。 WENN.com

式典初っ端から「人種の多様性」が謳われましたが、白人が大半を占める客席を見回したサムバーグが、「ジャッキー・ロビンソンの初試合で、『ドジャース史初の多様性をご覧あれ!』と宣言したようなものですが…」と、差別撤廃からは程遠いことを指摘しました。1890年以降白人選手はMLB、黒人選手はニグロリーグと完全に分離されていた球界で、初めてMLB参加が許され、有色人種のメジャーリーグ入りの道を切り開いたパイオニアがロビンソンなのです。

黒人女優3人がエミー賞を手にしたくらいで、「人種の多様性」などちゃんちゃらおかしいではありませんか?精々、「エボニー&アイボリー」くらいで収めておけば良かったのでは?それでも、「American Crime」でノミネートされていた数々の役者や放送作家を出し抜いて、演技派レジーナ・キングが唯一助演女優賞で評価されたのは、嬉しいことです。更に、ドラマ部門のウゾ・アドゥーバとヴィオラ・デイヴィスで総計3人です。

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ハリウッドのパイオニア・トリオは、(左から)ヴィオラ・デイヴィス、ウゾ・アドゥーバ、レジーナ・キング。ラテン系、アジア系の俳優が受賞するのはいつのことだろう?私の目の黒いうちにお願いしたいものだ。 WENN.com

デイヴィスが受賞しなきゃ嘘でしょ!と思ってはいましたが、受賞スピーチにはジュリアード学院卒でありながら、肌の色だけで差別されてきた苦難が存分に込められていました。ラテン系、アジア系然り、白人以外の俳優は、善くぞ言ってくれました!と喝采したに違いありません。そして、今日のために、茨の道を切り開いてくれたハル・ベリー、ケリー・ワシントン(「スキャンダル」)と、ワシントンに続いてシリーズ主演を果たしたニコール・ベハーリー(「スリーピー・ホロウ」)にも言及しました。デイヴィスほどの大物映画女優が登場するまでは、ワシントンとベハーリーがシリーズで頑張って地盤を築いていたからです。

やっと手にしたエミー賞、「次はアカデミー賞!」と思ったのですが…人の成功を素直に喜べない人が約1名いたのです。昼メロのベテラン女優ナンシー・リー・グラーン(57歳)が「ションダ・ライムズにスピーチを書いてもらうべきだと思う」に始まり、「私はもう40年女優をやってるけど、女優には尊敬もチャンスもあったもんじゃない。エミーは人種差別を訴える場じゃないわ。女は皆んな見くびられてるだから!」などと、つぶやいてデイヴィスの受賞にケチをつけました。確かに、差別は人種に限ったことではなく、性別、年齢が業界の争点となってうん十年です。しかし、グラーンは「デイヴィスはこれまで人種差別を受けていない。デイヴィス同様のチャンスが自分も欲しかった…」などと、恥の上塗りをする始末。業界人のみでなく、全米を敵に回して、引っ込みがつかなくなりました。翌日、謝罪と称して、まるで弁護士のような発言で怒り狂っている人達(特に、黒人)を煙に巻き、1週間後には話題に上らなくなりました。果たして、あれは今後益々チャンスが激減して消え失せるしかない女優の売名行為=最後の足掻きだったのでしょうか?それとも、今絶好調の名優デイヴィスへの単なるやっかみでしょうか?

あれだけテレビアカデミー会員が執着してきた「マッドメン」も、安直な結末でシリーズが完了、ジョン・ハムが悲願の主演男優賞を獲得して、過去の栄光に終止符を打ちました。今年は「人種の多様性」の名の下、名優デイヴィスの心からの発言で歴史的瞬間を祝う筈だったのですが、グラーンの心無いつぶやきのお陰で、何とも後味の悪い年となりました。


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