久々の癒し系2作品!14年冬のTCAプレスツアー - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

ハリウッドなう by Meg


前の記事:
「お騒がせ」ペイリン再登場、14年冬のTCAプレスツアー
次の記事:
カンバーバッチは普通の人?14年冬のTCAプレスツアー

久々の癒し系2作品!14年冬のTCAプレスツアー

(2014年2月20日)

冬のTCAプレスツアーは、前年秋に始まった新番組の方向修正を発表することが主目的ですが、ABCとNBCは視聴率の獲れない番組を潔く打ち切る決断を飽くまで渋りました。そして、このブログを書いている間に、打切りのニュースが次々と飛び込んできます。オリンピック終了直後から、次々と春の新番組を開始するため、どさくさ紛れに駄作を打ち切ってしまう策略のようです。

ドラマの陰湿度や過激度競争が激化してきましたが、嬉しいことに今ツアーでは、昨今貴重な癒し系ドラマとコメディー各1本が登場しました。

「LOST」「デスパレートな妻たち」が画面から消えた後も、毎年、あーでもない、こーでもないと、試行錯誤を繰り返してくれるABCが放つドラマ「Resurrection」が、その1本です。昨年5月初旬にABCから早々に送られてきた2013〜14年シーズンのパイロットを観て以来、放送を待ちわびてきた魂に語りかける期待作です。

中国の田んぼで目を覚ました少年ジェイコブが、故郷ミズーリ州のアーケディアという町に、戻ってきて目にしたのは、年老いた両親。ジェイコブ同様、次々と蘇るアーケディアの元住人は、何故かこの世を去った当時の姿で、家族のもとに戻ってきます。素直に受け入れる人、飽くまでも信じない人、何故自分の愛する人が蘇らないのか嫉妬する人、更に奇跡を信じるように説いてきた牧師でさえ、どう受け止めるべきか悩み、町中が混乱の渦に巻き込まれていきます。

mimura94my.jpg
「Resurrection」でカートウッド・スミス(左)は、ジェイコブの父ヘンリー・ラングストンを、フランシス・フィッシャーは、母ルシールを演じる。 Janice Ogata, Andrew Evans / PR Photos

ジェイソン・モットの著書「The Returned」の映像化ではなく、「登場人物の半数余りは創作、原作とは違う方向に展開した」と、脚本を任されたアーロン・ゼルマンが語りました。最近流行の「○○にヒントを得て」と言う感じでしょうか、「原作は読まずに、全く新しいドラマとして観て欲しい」とは、ゼルマンのたっての願いです。

まだ二話以降を観ていない私の最大の不安材料は、視聴者に散々結末を推測させた挙句の果てに、宇宙人の地球攻略の手だった!の如きSF的結末とか、実はゾンビだった!的ホラーで締めくくられることです。しかし、ゼルマンも原作の途中まではSFだと思って読んでいたところ、「喪失、嘆き、癒しの考察なのだ」とはたと気付いたと言います。「生きるとは、どういうことなのか?という、人間の永遠の謎に正面から立ち向かう姿勢を核にしました」と創作の経緯を語り、安心させてくれました。

mimura95my.jpg
「Resurrection」で、オマー・エップス(左)は移民局のベラミー調査員を、デヴィン・ケリーはジェイコブの従弟マギーを演じる。 Andrew Evans / PR Photos

但し、プレスツアーが終わってから、本作に「Imagine the Impossible」という副題がつけられました。タイトルだけで、内容やジャンルが把握できないからでしょうか?だとしたら、先行きが心配です。とは言え、シーズン1は8話を撮影済みで、仕上がりや結末に、「大いに満足している」とゼルマンは言います。癒し系ドラマは大ヒットした例がありませんが、今度こそ!と期待を寄せています。

一方、嘗てコメディーに強かったNBCが放つ心温まる「Growing Up Fisher」は、異色作です。「Resurrection」同様、コンセプトを文書で読んだら、絶対に「そんなアホな!」と切り捨てたと思いますが、パイロットは何度観ても、「やる気、元気、勇気」の宝庫で、希望の光に満ち満ちています。

クリエイターDJナッシュの生い立ちを描いたこのシリーズは、盲目の弁護士と妻の離婚を機に、意外にも家族の絆が強まるフィッシャー一家を描く、嘘の様な本当の話。盲導犬エルビスにとって替わられ、父親に見捨てられたような寂しい思いをする11歳の息子ヘンリー。高校生の娘ケイティーは、青春を謳歌し損ねた母ジョイスにつきまとわれ、役割が逆転。離婚や盲目など難題を扱う割には、明るく、楽しく、心温まるコメディーに仕上がっているから不思議です。

【動画】 「Growing Up Fisher」トレーラー

成功の秘訣は、盲目の弁護士メル役に登板した、他ならぬJ.K.シモンズ(「クローザー」のポープ役)です。「絶対に読まない!」と決めた脚本の山に入っていたにも関わらず、本を読んだ後、ナッシュのお父さんに会いに行って、惚れ込んだ役。シモンズだから、嘘の様な話が心温まるコメディーとして成立します。障害をものともせず、やってやれないことはない!的楽観的な生き方が、視聴者に希望の光を与えてくれます。

mimura96my.jpg
「Growing Up Fisher」のメル役J.K.シモンズ。ジャンル、拘束時間、盲目役が避けていた三大理由だったが、エージェントに説得されて読んでみたところ、すっかり気に入った。 Andrew Evans / PR Photos

また、メルを慕う息子ヘンリー役に起用されたイーライ・ベイカーは、こまっちゃくれた子役ではなく、どこにでもいそうな普通の少年で、父子関係を巧みに表現します。また、母親ジョイス役は、パーカー・ポージーからジェナ・エルフマン(「ダーマとグレッグ」)に交替し、明るさが何段もアップしました。

パイロットの最後に、メルがヘンリーにアパートの鍵を渡し、二人の住まいであることを示すジーンと来るシーンがあります。クリエイターのナッシュに、「この春一番の元気をくれるイチ押し作!」と感想を述べたところ、「父がくれた鍵だよ!」とそれは嬉しそうに、ポケットから取り出して見せてくれました。こんなに父親思いでいられるなんて、本当に素敵なことだし、その気持ちをテレビシリーズで表現できるなんて....再度、感涙してしまいました!最近、涙腺が緩んでいて困ります。


前の記事:
「お騒がせ」ペイリン再登場、14年冬のTCAプレスツアー
次の記事:
カンバーバッチは普通の人?14年冬のTCAプレスツアー

最近の記事

▲ TOP