勧善懲悪なんてどこ吹く風?ムカつく「スキャンダル」の結末 「LOST」同様、貴重な時間を返して欲しい メリーの大統領就任で終わった方が、潔かったのに - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

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勧善懲悪なんてどこ吹く風?ムカつく「スキャンダル」の結末 「LOST」同様、貴重な時間を返して欲しい メリーの大統領就任で終わった方が、潔かったのに

(2018年6月 7日)

※日本未公開シーズンについてのネタバレがあります。


去る4月19日、「スキャンダル 託された秘密」は7シーズン124話で幕を閉じました。途中でダレてしまい、一度は盛り返したものの、貧乏くじを引いたのはジェイク(スコット・フォーリー)とデビッド(ジョシュア・マリーナ)のみと言う実に腹立たしい’完’でした。何が言いたかったのでしょうか?クリエイターの意図が全く見えません。それに正義は存在しないとは薄々(?)感じてはいましたが、勧善懲悪などどこ吹く風?的結末には空いた口が塞がりません。こんなムカつく終わり方だと知っていたら、我慢強く最後まで観る必要はなかったのです。メリー(ベラミー・ヤング)が大統領に就任した時点で、’完’とした方がどれほど盛り上がったことでしょう?シーズン7は、「殺人を無罪にする方法」とのクロスオーバー回があったり、#MeTooやTime's Up推進的逸話があって、完結話までふらりふらりと寄り道感があり、下手に引き伸ばさずに、6~7話にぎゅっと詰め込んで、濃い内容にして欲しかったと思います。


思い返せば、シーズン4の最終話でオリヴィア(ケリー・ワシントン)とフィッツ(トニー・ゴールドウィン)がよりを戻し、オリヴィアが誤ちから学び、人間として成長することを期待していた私は、すっかり興醒めしました。ここに至るまでに、何人の人間が殺され、傷付き、職を奪われ、追放されたか?を考えると、実に虚しく、又残虐度が跳ね上がり、目も当てられないシーンが激増したのも忘れられません。何故、悪党がいつもしぶとく生き残り、善人は削除され、バタバタと倒れて行くのでしょう?これが、政界の現実と諦めるしかないのでしょう。いえ、今や政界だけではありません。トランプ就任をきっかけに(?)現実でも偽善者や悪人がはびこり、のさばるようになりました。あー、虚しい!こんな世の中が、今後何年続くのでしょうか?古き良き時代は、もう過去の遺物なのでしょうか?


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1月10日、最後の「スキャンダル」セット訪問で写真撮影。ホワイトハウスの大統領執務室セットで行われたインタビューに参加したのは、(左から)クィン役ケイティ・ロウズ、ワシントン、ヤング。(c) Meg Mimura


オリヴィアは口では「私の責任」と言いますが、結局のところお咎めは一切なく、罪の償いは全てジェイクに押し付けて、フィッツとのハッピーエンドが示唆されました。紆余曲折を経て、二人の恋は実ると言いたかっただけなのです。又、いつのことなのか不明ですが、オリヴィアの今と何ら変わらない颯爽とした肖像画が首都ワシントンの美術館に展示されていて、遠からぬ将来オリヴィア自身が大統領に就任するか、又は政界に軌跡を残すことが示唆されています。オリヴィアとフィッツの将来も意味深な映像が流れるのみで、ライムズは相変わらず「ご想像にお任せするわ」とだんまりを決め込んでいます。


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(左から)副大統領に就任しても大統領の座を虎視眈々と狙うサイラス役を演じるジェフ・ペリー、貧乏くじを引くことになるジェイク役のフォーリーと、一番可哀想なデビッド役のマリーナの3人。気になるのは最近姿を見せなくなったジェイクの妻ヴァネッサだが、この人も悲運の女となるのだった。(c) Meg Mimura


ライムズの屁理屈は今に始まったことではありません。ABC局でのデビュー作「グレイズ・アナトミー」のシーズン1では、テーマは「医者は人間らしく、インターンは医者らしく」だと言い切ったにも関わらず、シーズン7辺りから「メレディスとクリスティーナの友情」が最初からテーマだったと豹変。えー!?それって、こじ付けですよと反論したくなることを平気で口にします。ある評論家に言わせると、「スキャンダル」の制作陣の記憶力は、3話分だとか。確かにそうですねえ。一本筋が通っているのが普通なんですが....だから、訳の分からない気の抜けた炭酸水みたいな結末になってしまうのでしょう。臨機応変に展開を変えたことが、祟っての結果かも知れません。


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どう言う組み合わせなのか、この部屋に集まったのは(左から)ハックを演じたギレルモ・ディアス、アビー役のダービー・スタンチフィールド、殺し屋チャーリー役のジョージ・ニューバーン。(c) Meg Mimura


好例は、オリヴィアだけは人を殺めない筋を貫き通すと断言しておきながら、自分達に都合の悪いことを知っていて脅迫する元副大統領を無惨に殴り殺す始末です。ドラマの展開は、オリヴィア役を演じるワシントンの2回に及ぶ妊娠・出産で大きく方向転換をせざるを得なかったとは言え、筋書きに多大なる影響を及ぼした筈です。共演者や撮影班には迷惑千万な話です。撮影していない間は、俳優にも撮影陣にもギャラ/給料は支払われないので、収入を補う為に、限定シリーズやテレビ映画に出演した俳優達がいました。シーズン5辺りで、久々にキャストの数人と映像インタビューをした際、「この中で、まだ人を殺めていない人は誰ですか?」と確認したほど、破茶滅茶になってしまいました。私の記憶が正しければ、最終話まで自ら殺人に手を下さなかったのは、アビー(ダービー・スタンチフィールド)、デビッド、メリーとマーカス(コーネリアス・スミス・ジュニア)の4人のみです。しかし、最後の最後にデビッドは殺されてしまうのです。アビーが怒り狂わず、実しやかにお墓参りする場面には、特にムカつきました。私なら怒り狂って、犯人に仕返ししますよ。無駄な死に方をするって、俳優にとってはどんな感じなのでしょうか?今度マリーナに聞いてみたいと思います。


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最初に通された会議室には、マーカスを演じたスミス・ジュニアとフィッツ役のゴールドウィンが登場。個別インタビューだったので、唯一の北斗七星を演じたスミス・ジュニアの話を聞いた。フィッツは、最終シーズンは不要だったと思うのは私だけ?(c) Meg Mimura


要は、オリヴィア以下フィクサー達の悪事の数々から世間の目を逸らす為に、遂に秘密組織B613の存在を明らかにし、公聴会まで開かれたにも関わらず、関係者一同には何のお咎めもなく、ジェイク以外は晴れて放免となります。しかも、オリヴィアの父イーライ(ジョー・モートン)と来た日には、公聴会に堂々と出席し、「白人社会を裏で糸を引いていたのは、何を隠そう黒人の私だったのだ!」とバラしますが、気が狂ったのか?と疑う議員さえおらず、皆後ろめたそうなのです。そんな理不尽な話ってあります?御上に向かって、謀叛を起こしたのは私と告白しているのに、何のお咎めもないのです。これってお伽話だったの?と目を疑ってしまいました。極め付けは、あれ程嫌がっていた父親との夕食を、何がどう変わったのかは不明のまま、今は楽しんでいるオリヴィアの姿です。はー???


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B613を使って、共和国の重要事項を差配していた事実を発表することになるイーライ・ポープは、ジョー・モートンが熱演。黒人の本音を吐いたキャラで、最終話でも狂気の沙汰を披露したが、無罪放免となった!!!(c) Meg Mimura


まだまだ、不満、不平は山ほどありますが、考えるとムカつくだけなので、「LOST」や「Mad Men マッドメン」同様葬り去るしかないのかな....?と考えていたところ、5月の新番組発表会で吉報が発表され、もうすっかり過去のこととして諦めがつきました。スコット・フォーリー制作主演の「Whiskey Cavalier」というスパイ・ドラメディーが来春の新番組として登場します。トレーラーを観た限り、フォーリーお得意のコメディーに近いドラマに仕上がっていて、ファンとしては、そそくさとこちらに乗り換えま~す!とはしゃいでしまいました。捨てる神あれば拾う神ありとは言い得て妙です。


【動画】Whiskey Cavalier - Official Trailer


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