年増女優の確執を描くライアン・マーフィーの「Feud: Bette and Joan」。ハリウッド史上最大のライバルの醜い闘いを描いていと可笑し!実は、排他的白人男社会を批判するドラマか? - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

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年増女優の確執を描くライアン・マーフィーの「Feud: Bette and Joan」。ハリウッド史上最大のライバルの醜い闘いを描いていと可笑し!実は、排他的白人男社会を批判するドラマか?

(2017年3月27日)

ABCはションダ・ライムズ、CWはグレッグ・バーランティ、NBCはディック・ウルフの手になるドラマの発表の場となっているように、ケーブル局FXはライアン・マーフィー局と化した感があります。「Glee」でお馴染みのマーフィーは、同局で「NIP/TUCK マイアミ整形外科医」を手がけて以来、「アメリカン・ホラー・ストーリー」「アメリカン・クライム・ストーリー」等のアンソロジーを次々と発表して成功を収めてきました。


今日、ご紹介する「Feud」は、マーフィーのアンソロジー・シリーズ第三弾。3月5日から始まったシーズン1「Feud: Bette and Joan」は、ハリウッド史上最大のライバル女優ベティ・デイヴィス対ジョーン・クロフォードの壮絶な闘いを8話で描きます。プレミア前の2月28日、シーズン2「Feud: Charles and Diana」(10話)の制作が発表され、FXの鼻息の荒さを明示しました。シーズン2は、英国王室に舞台を移して、チャールズ皇太子とダイアナ王妃の確執が描かれます。


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ベティ(スーザン・サランドン・左)は家族の支援を受けて舞台女優として名を馳せていた。しかし、ユニバーサル時代には、色気がないと酷評され、ワーナーに移るまでは実力を発揮できなかった。一方、ジョーン(ジェシカ・ラング・右)は、貧困生活から這い上がるためには何でもやってのけるダンサーだったが、野望を抱いてハリウッドにやって来た。スターにのし上がるまでに、相当卑劣なことをしたらしく、女優達からは総スカンを食らっている。 Suzanne Tenner/FX


長年デイヴィスのファンだったマーフィーは、亡くなる直前にインタビューを取り付けました。去る1月12日のTCAプレスツアーに駆けつけたマーフィーは、「『モノマネしたくなるほどの、どぎつい女優にならないと忘れられる。だからいつもベティ・デイヴィスを演じてる訳よ』が前置きでしたが、4時間に渡って話し込んだデイヴィスは、普通の人でした」と裏話を披露。デイヴィスの「地」に触れた体験を基に本作を制作したマーフィーは、「60年代のハリウッドで’老いてますます盛ん’の場を奪われた女優の哀しさ、悔しさ、やるせなさを描きたかった」と語りました。


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映画「何がジェーンに起こったか?」のセットでベティ(サランドン)の不平不満を聞くロバート・アルドリッジ監督(アルフレッド・モリーナ)。職場ではライバル女優の醜い争いに、家庭では妻におもねるのに一苦労。体がいくつあっても足りないロバートだ。 Suzanne Tenner/FX


ハリウッド史上最大のライバルとは、ブロードウェイで鍛えた演技派女優ベティ(スーザン・サランドン)と、ダンサー上がり故にスターの座にこだわるジョーン(ジェシカ・ラング)です。時代は既に、マリリン・モンロー、オードリー・ヘップバーン、ナタリー・ウッド等に移行しており、活躍の場を失ったジョーンが、カムバックを図ろうと躍起になって探し当てた小説「何がジェーンに起こったか?」の映画化プロジェクトに、宿敵ベティを起用することから始まります。当時、ホラー・ジャンルは誰も手を出したがらず、映画「枯葉」(1956年公開)でジョーンを演出したロバート・アルドリッジ監督(アルフレッド・モリーナ)に白羽の矢が立ちます。


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ロバート(モリーナ)は、「枯葉」で演出したジョーン(ラング)から、小説の映画化を手伝って欲しいと持ちかけられる。お互い、スランプが続いており、ジョーンは盛りを過ぎた年増女優として消えるかカムバックを果たせるかの瀬戸際だった。プロデューサーの立場からベティをねじ伏せられると思ったジェーンだったが、現実は男どもに将棋のコマに使われるに終わった。 Suzanne Tenner/FX


アルドリッジは、ブロードウェイで端役に甘んじていたベティを説き伏せ、配給にはワーナー・ブラザース映画のジャック・ワーナー社長(スタンリー・トゥッチ)を巻き込んで、撮影に漕ぎ付けます。ベティに訴えられた恨み、ベティの後釜に雇った筈のジョーンの我が儘に手を焼いていたジャックは、二人の一騎打ちを銀幕に映しだせば、興行収入に繋がると見込み、あの手この手で確執を煽ります。


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女優達の法外な要求にむかついていたジャック・ワーナー社長(スタンリー・トゥッチ)は、映画の配給を引き受け、黒幕としてベティとジョーンを思いのままに操っていた。どんなに足掻いても、女優は単なる商品=モノでしかないと、自分の権力を顕示することで報復。 Kurt Iswarienko/FX


確執の背景やハリウッドの史実は、女優オリヴィア・デ・ハヴィランド(キャサリーン・ゼタ・ジョーンズ)とジョーン・ブロンデル(キャシー・ベイツ)が、ドキュメンタリーのインタビュー形式で語ります。男が牛耳る社会で、若さも美貌も失い’売り物’にならない女の奮闘努力と足掻きが見事に描かれており、60年以上経った今も、世の中はほとんど変わっていない!!と愕然とします。もっとも、21世紀に入ってから、50代以上の女優が演じられる役の数が増えたことは確かですが、それでも女性解放運動を続けなければ、元の木阿弥になるに違いないと確信します。


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オリヴィア・デ・ハヴィランド(キャサリーン・ゼタ・ジョーンズ)は、ベティの唯一の味方だった。デ・ハヴィランド(100歳)は現在フランスに住んでいるが、実妹ジョーン・フォンテインとの確執は、ベティ対ジョーンの次に有名である。妹の恨みや嫉みの的となったデ・ハヴィランドは、ジョーンの標的ベティに同情を寄せた。 Suzanne Tenner/FX


そして、「何がジェーンに起こったか?」(62年公開)のジェーン役で、ベティがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、完全に無視されたジョーンがどうするか?を山場に、常に脚光を浴びていないと気が済まないスターの哀しい性が描かれます。自尊心の低い成り上がりジョーンが、演技派ベティに女優として認めてもらう為に、次々と汚い手を打っては闘いを挑む姿は、憐れとしか言いようがありません。同じ立場なんだから、下手な競争心やプライドを捨てて、結託して男どもを見返して!と叫びたくなります。但し、スターの座についたことのない一般女性を代表して言わせて頂くなら、ジョーンの焦りや足掻きは実感としては湧いてきません。ほんの一瞬でも、「仕切る人」になった経験があると、力を失うことが何よりも怖いのでしょうか?何もかも失った時に、自分に直面せざるを得ないことの方が怖いのかも知れません。


一見、女同士の闘いを描いているような本作ですが、マーフィーの真の意図は実は他にあるようです。1998年、初めてセットに足を踏み入れた時に感じた疎外感を「ゲイは僕だけで、他は50代のヘテロのおじさんたちばかり。孤独!でした」と語ります。当時の独りぼっちの気持ちを救ってくれたのが、希少価値である女性スタッフで、「恩返しとして、どのプロジェクトでも撮影班の50%は女性かマイノリティーを雇ってきた」と付け加えています。但し、マーフィーの言うマイノリティーは、伝統的な定義ではなく、所謂白人ヘテロ男性のみ(こちらの方が人口で言うとマイノリティー?)が差配する家父長制度(=男社会)で見下げられてきた人達を十把一絡げにしたものです。白人でもLGBTQのカテゴリーに属する人達から、白人以外の多種多様な人種、更に何世紀も’モノ扱い’されてきた女性までを含みます。と言うことは、マーフィーは、トランプ政権に反抗する「その他大勢」を代表しているような気がします。


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