TCA冬のプレスツアー、喉元過ぎて熱さを忘れた(?)局幹部 - ハリウッドなう by Meg | TVグルーヴ オフィシャル・ブログ アーカイブ(更新終了)

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TCA冬のプレスツアー、喉元過ぎて熱さを忘れた(?)局幹部

(2013年2月11日)

サンディフック小学校銃乱射事件から、約3週間後に始まった地上波局の新作発表。大惨事の記憶が生々しく、再発防止にバイデン副大統領が任命されたばかりだと言うのに、NBCは6日「Do No Harm」、Foxは8日に「The Following」、13日CWは「Cult」のパネルインタビューを実施しました。当然のことながら、多数の評論家から「このご時世にマジですか?」的批判を受けました。1カ月も経たないうちに、実しやかに屁理屈を並べる地上波局のお偉方は、喉元過ぎて熱さを忘れたのでしょうか?それとも、ほとぼりがさめるのを息を潜めて待つつもりだったのでしょうか?

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ケヴィン・ベーコンは、奥方キーラ・セジウィックのシリーズ「クローザー」が完了したので、「The Following」の主役を引き受けたと語った。 Andrew Evans / PR Photos

NBCエンターテインメントのロバート・グリーンブラット会長は、「心理学者ではないので、テレビで殺人鬼を観ると、実行に繋がるとは言えない」と初っぱなから逃げ腰。テレビが発明されて以来、映像と非行/犯罪の相関関係を実証する試みがなされてきましたが、未だそのようなデータがない(?)ことを理由に、「科学的に実証されるまでは、こちとらも商売だし....」という屁理屈です。

今秋か、早ければ夏に放送予定の「Hannibal」も、会長は「凶悪行為そのものは見せない。死体が転がっているだけ」と、真顔で述べました。更に、NBCドラマ制作部長は、「「The Following」のパイロットは確かに面白かったけれど、「Hannibal」の主人公はFBIプロファイラーで、捜査に行き詰まった時にハンニバル・レクター博士に相談するだけだから、「Following」ほど残虐なドラマではない!」と大量殺戮や異常犯罪への感度が完全に麻痺している人間の発言です。言い訳している本人達もきまり悪くなるほど、押し問答が繰り返されましたが、地上波局が若年層の視聴者獲得に躍起になっているからこそ、この手の殺人鬼養成的作品を自粛して欲しいと言う我々評論家のメッセージには、聞く耳持たぬお偉方達です。

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「Hannibal」でFBIプロファイラーを演じるヒュー・ダンシー。「Do No Harm」が早々に打ち切られたため、予定を繰り上げて、4月放送開始が発表された。 Janet Mayer / PRPhotos.com

グリーンブラット会長は、Showtime局のドル箱作品「デクスター」の制作に関わった張本人なので、言葉を濁しているのかと思いきや、殺人鬼の極み作品を棚に上げて、「「Following」「クリミナル・マインド」の方がもっと残忍」と引き合いに出す始末です。更に、テレビより、映画やビデオゲームに難ありと責任転嫁まで。昔から尊敬に値する数少ない良心的な局幹部の一人と尊敬していただけに、のらりくらり質問をはぐらかすグリーンブラット会長には大いに失望しました。

昨秋から話題の「The Following」は、連続殺人鬼を養成する教授に立ち向かうFBI捜査官のドラマです。前評判とプレスツアーであれだけ話題になれば、Foxはしめしめと思っているに違いありません。私はトレーラーさえ直視することができず、パイロットは異例のパス!!ジキル博士とハイド氏21世紀版ドラマ「Do No Harm」でさえ、暴力や血腥さ度が高くて観られなかったので、「Following」をパスしたのは大正解だったようです。

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放送作家ケヴィン・ウィリアムソンは、エドガー・アラン・ポーのファンだと告白。血腥い作品が次々と生まれる訳だ。 Alan Hess / PR Photos

クリエイターのケヴィン・ウィリアムソンは、ゴシック/恐怖小説の大家エドガー・アラン・ポーの世界に12歳から浸っていることを告白した上で、「ボクは捏造した世界の語り部に過ぎない」と守りの姿勢を貫きました。Foxエンターテインメントのケヴィン・ライリー会長は、「乱射事件と映像の関係は、様々な要素が絡んでいるので、テレビだけが悪いとは言い切れない。放送するからには、責任を追う覚悟はある」と強気です。但し、「何の規制もかからない過激なケーブル作品に対抗するには、午後9時の放送枠にケーブルを上回る作品をぶつけるしかない」の言い訳も付け加えました。嘗てNBCで、秀作「Friday Night Lights」を世に出したこのお偉方も、弁護士並みの切り返しを準備して、質疑応答に臨んだものと思われます。極めつけは「視聴者のニーズを察して、作品を提供するのが我々の仕事だから」と、「番組にどっぷりハマるから、余計に残忍さを強烈に感じるでしょう」のコメント。はー?若年層の繊細な目や脳に曝すべきではない映像/内容がある筈。自主規制するほどの良心を持ち合わせていないのでしょう。

質問をはぐらかすことにかけては業界一のCBS社長ニーナ・タスラーは、犯罪捜査局CBSで「放送中のドラマに大満足している」としらじらしくコメント。他局のお偉方が引き合いに出しただけでなく、全米で乱射再発防止や、何故このような事件が尽きないのか、何が引き金となっているか等の討論で必ず槍玉にあがる同局の「クリミナル・マインド」について、「万人受けする番組ではありませんし、大人向けという表示もしています。私は楽しんで観る番組よ」と笑みを浮かべて語ります。レッテルを貼れば良いと言うものでは....しかも、「CBSの犯罪捜査ドラマでは、異常犯罪者や連続殺人鬼は必ず捕まります。正義が勝って、悪は滅ぼされます」と付け加えました。どんな残忍な犯罪を犯しても、CBSのドラマでは「捕まる」から良いという、またまた異種の屁理屈が飛び出しました。

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槍玉に挙がった「クリミナル・マインド」でFBIプロファイラーを演じるトーマス・ギブソン。 Izumi Hasegawa / PR Photos

唯一、良心的な答えが出たのは、過激な描写で名を馳せたFX局のジョン・ラングラフ社長からでした。毎プレスツアー、この社長の率直な対応を楽しみにしている評論家が多いので、ますます期待が募っていました。私好みのドラマは制作しない局にも関わらず、社長の業界への情熱の籠った思慮深い発言はいつも有難?く拝聴します。今回は、今後映像と乱射事件の相関関係を研究して行く必要性を強調し、同局で高視聴率を誇る「Sons of Anarchy」がイギリスでもヒットしているものの、規制の差で銃を使った殺人件数は、「英国1に対し米国は90」なる統計を指摘しました。

しかし、「Sons of Anarchy」「アメリカン・ホラー・ストーリー」も放送は午後10時枠=大人の時間と決めていること、また3人の息子(15歳、12歳、9歳)にはXboxやプレイステーションで、一人称視点のシューティングゲーム(FPS)はさせない方針であることも述べました。長男は友人宅でビデオゲームを体験しており、「食べ物を探して狩りをしているワケじゃなくて、視野に入るものは何でも撃ち殺すって尋常じゃないよ」と嫌悪感を述べたそうです。さすが!

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「Sons of Anarchy」の主人公ジャックスを演じるチャーリー・ハナム。 Tina Gill / PR Photos

ラングラフ社長は、確かに銃管理やビデオゲームを引き合いに出しましたが、今後業界として相関関係の研究に協力していくとも述べました。今ツアーで、唯一の良心的な回答だったと思います。人間は生活環境の中で頻繁に目にするものには、慣れっこになり、感度が薄れるもの。中でも映像は、「異常」を「普通」に変える力を持っています。更に、近年の脳科学の発達で、発光体(映画、テレビ、コンピュータ、携帯)に刺激された脳は、睡眠や思考を変えていることも実証されています。私は己の敏感さをよく知っているので、自分で管理できますが、判断力がつく前から若年層を過激な映像に曝すことには反対です。残念なことに、「The Following」は好調です。映像による暴力や残忍な描写は、今後もますますエスカレートしていくのでしょう。いと悲し!


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